
パーパス(Why):日本をもう一度「世界で勝つ国にする」
ミッション(How):「外貨を稼ぎ、日本の未来を創る」
20代の学生起業集団は、かつて世界が称賛した誇れる日本を、もう一度取り戻そうとしている。手段は、圧倒的なまでの「事業開発力」だ。
新規事業開発支援を行うAlphaDriveが主催した学生向けの事業開発イベント『New Business Boot Camp 2025』で優勝を飾ったGaikaチーム。わずか3ヶ月のプログラム期間で、グローバル規模で仮説検証を行い、サプライチェーンを構築し、事業化に向けた確かな手応え(トラクション)を掴み取った。
未来の日本経済を切り開く、若き起業家たちのインタビューを届ける。


坂本大地
株式会社Gaika 代表取締役社長 兼 CEO
オーストラリアの大学に在学中。2022年に16歳で空き家管理・利活用を行う会社を創業。現在は、2024年に創業した中小企業向けのデジタルマーケティング支援会社を経営している。

清原来輝
株式会社Gaika 取締役 兼 CEXO(Chief Execution Officer)
大学と並行して、フリーランスとしてSNSの運用などを行う。高校のラグビー部で同期だった坂本に声をかけられてGaikaを共同創業。

水島澄香
株式会社Gaika 執行役員 兼 CBO(Chief Branding Officer)
学生起業を経て、デザイン・ブランディングを軸に複数事業の成長を牽引。Gaikaでは、クリエイティブチームを統括。
学生起業家仲間が手を組みGaikaを結成。事業開発プログラムへ殴り込みをかける
──皆さんは、それぞれが大学在学中に起業している、学生起業家の連合チームとして「New Business Boot Camp 2025」に参加されました。経緯を教えてください。
坂本: 2025年に沖縄で開催された、スタートアップとカルチャーが融合したイベント『KOZAROCKS2025』がきっかけでした。
イベントに協賛していたAlphaDriveの代表・麻生さんをはじめ、さまざまな起業家とコミュニケーションを取るなかで、皆さんの貪欲さやチャレンジに刺激を受けたんです。
「やっぱり起業家はこうじゃないと」とショックを受けました。
僕自身、起業した会社でありがたいことにお仕事をいただけており、細々とではありますが安定していたことで、ハングリー精神を失っている気がしたんです。
そこで、デザイナーとして以前から信頼し、尊敬していた水島がたまたま沖縄にいたので、『KOZAROCKS』の翌日にコザで直接声をかけ、さらに、東京に戻った当日には、高校の同期で別分野ながら活躍を聞いていた清原と、現在もチームの主軸を担っている城戸・今野にすぐさま声をかけてGaikaを結成(※)。以前からお話を聞いていた「New Business Boot Camp 2025」に参加することを決めました。
(※)会社設立は2025年9月。企業の代表として3名がプログラムに参加。

立ち上げ直後、自らの存在意義をクラファンで検証
──プログラムの最初のアクションを教えてください。
坂本:具体的な事業の仮説検証と並行して、そもそものGaikaの根幹となる「外貨を稼ぎ、日本の未来を創る」というコンセプト自体が今の日本社会に求められているのかを検証してみました。
事業案は白紙のまま。プログラムの最初の約1ヶ月間を使ってCAMPFIREでクラウドファンディングを実施したんです。
清原:結果として、コンセプトしかないにもかかわらず220万円超もの支援が112名の方々から集まり、「ビジネス・起業カテゴリー1位」「総合人気ランキング4位」という大きな反響をいただきました。これだけ「外貨を稼ぐ」というアプローチが日本経済から求められているんだと確信しましたし、何より社会全体から「お前ら、やって来い!」と強烈なGoサインを出された気がしたんです。
その期待と熱量に絶対に応えなきゃいけない。そこからさらにギアを上げて土日も深夜も関係なく、具体的な事業構築へとフルコミットしていきました。


留学生だから見えた、一時滞在者の衣服廃棄問題
──具体的な「事業アイデア」は何に設定されたのでしょうか?
坂本:注目したのが、私の留学先であるオーストラリアにおける、一時滞在者の衣服の課題です。
オーストラリアは、人口の約1割が留学やワーキングホリデーで訪れている一時滞在者なんですが、彼らは現地で滞在用の衣服を購入します。そして、滞在が終わって帰国する際に、購入した衣服をほとんど捨ててしまうんです。
オーストラリアでは、衣服の回収ボックスはほとんど目にしません。友達にあげようにも、帰国前はビザの手続きや航空券の取得、家賃の解約などやることが多くて時間がなく、捨てるしかなくなってしまうんです。
そこで、廃棄する衣服を回収して、新たにやってくる一時滞在者に安く提供するサイクルをつくり、どこかにマネタイズポイントを置いてビジネスとして成立させられないかと考えました。
帰国する人は衣服を捨てずに済みますし、訪れたばかりの一時滞在者にとっても、高い物価の中で衣服を買う負担もなくなります。一時滞在者の「捨てるしかない」と「新品を買うしかない」を結ぶサービスの仮説を考えたのがスタートですね。
──留学生ならではの視点ですね。
水島:私も留学をしていて同じような悩みがあったので、すごく共感できました。友人同士だと値付けが難しいですし、お金のやり取りも煩わしいですからね。

清原:私は坂本から話を聞き、現地の様子を体感したかったので、すぐにオーストラリアへ向かいました。ヒアリングシートをつくって、日本人の一時滞在者はもちろん、街にいる“一時滞在者っぽい人”に声をかけて(笑)、アンケートを取りました。
坂本:清原は、話した後、本当にすぐ来ました。しかも自費で(笑)。さらに、英語があまり喋れないのに、通りすがりの人にガンガン声をかけていました。2、3日かけてみんなで100人規模のヒアリングができました。
清原:出国前の日本人の友人に仮に当ててみると「メルカリのようなフリマアプリで売る」という答えがほとんどだったのですが、実際にオーストラリアでは、「まだ考えてない」とか、「捨てるかもしれない」という意見が多く集まり、仮説に可能性を感じました。
古着業界の複雑なサプライチェーンが立ちはだかる
──その後、Gaikaチームは実際に衣服の回収に取り掛かりました。施策の中心は水島さんと伺いました。
水島:はい、クリエイティブを作り、SNSを通じた初期の認知拡大と利用想起を目的とする広告を実施しました。同時に、出張買取や現地の企業と連携して回収ボックスの設置を行い、高い効率で実際に回収することができました。

坂本:これがすごくうまくいったんです。1ヶ月で1,000枚を超える衣類が回収できました。
ところが、そこからが問題でした。
……まったく売れなかったんです。集めた衣服をまとめて古着店に売ろうとしたのですが、売れない。
回収さえできればすぐ売れるだろうと考えていたので、少しパニックになりました(笑)。
水島:回収した古着は一旦坂本の家で保管していたので、部屋がみるみるうちに古着で埋もれていましたよ(笑)。

坂本:それまで、古着店では誰かが持ち込んだ衣服を安く買い取って、高く販売しているだけかと思っていたのですが、それは大きな間違い。実は古着業界には、国をまたいだ複雑なサプライチェーンがあったんです。
清原:集めた衣服を何とかしなくてはと思い、すぐに坂本と2人で古着サプライチェーンの要所となっている東南アジアへ行きました。

国際情勢に翻弄されながらも前進し続ける、優れた起業家の資質
──東南アジアでの活動について教えてください。
清原:まずは現地やその周辺国の古着業者を300件くらいリストアップし、電話で「直接お話させてください」と交渉して、バイクタクシーで話を聞きに回りました。
当然まったく相手にされず、「結局、お前ら買わないの?買わないなら話は終わりだから帰れ」なんて、ガタイのいいおじさんにキレられたり……壮絶でした(笑)。今考えれば、急に来た外国人の新参者にビジネスの要点を話すわけないよな、と思います。

坂本:ちなみに清原はアジアの国々の言葉も喋れません(笑)。私は英語なら話せるのですが、それでも現地の人とはほとんど意思疎通できないので「This?」とか「フォースリーゼロ(430)、OK?」とか勢いでコミュニケーションをしました。10日くらいの滞在で、1日8件程度の商談というか、ヒアリングを行いました。
その期間は、日中は古着業者との商談をして、夜は私と清原は安宿の同じ部屋に泊まり、回収サイドを担当する水島をはじめ、それぞれの持ち場で奔走してくれているメンバーたちと進捗を共有し、次の日のアクションを考える……ほとんど眠らずに仕事をしました。
水島:その時、私は日本からオンラインでミーティングをしていたのですが、2人の背後に巨大な古着倉庫が映っていた日もありましたね。

清原:業者に断られ続けながらも、諦めずに何度も通っているうちに少しずつ話を聞いてもらえるようになり、古着業界の構造の話を少し聞かせてもらい、さらには「試しに一回だけ取引してやるよ」とチャンスをくれる業者も出始め、最終的には7つもの協業候補先を開拓することができたんです。
坂本:そして、何とかオーストラリアをはじめ、世界中で5社ほどの見込み顧客を獲得することができたんです。これによって回収、卸仕入れ、販売のサイクルが実現可能なことがわかり、このビジネスモデルが機能すると確信できるだけの、トラクションを得ることができました。
──ここまで、キックオフから約3カ月。チームでの圧倒的な検証活動を経て、見事に「New Business Boot Camp 2025」で優勝を果たしました。
国際情勢に翻弄されるも、活動はすでに「次の事業開発」へ
──イベントの最終プレゼンは2025年12月。本日の取材日は2月上旬と、2カ月弱の時間が流れました。その後のGaikaの事業の動きを教えてください。
坂本:優勝後も事業の推進と次の検証を続けていました。
しかし2026年の年始、東南アジアとオーストラリア間の貿易情勢が大きく変わり、僕たちが開拓した国のサプライチェーンが機能しなくなることが起こりました。
今から、また当時のような開拓を別の国ですることもできますが……本当にそれでいいのかどうか。一瞬で状況が変わる国際ビジネスの辛酸を味わいましたね。
──Gaikaチームの衣服リユース事業は暗礁に乗り上げました。今後、会社としてのGaikaはどうされるのでしょうか?
坂本:僕たちの間では、特に落ち込むようなことはありませんでした。チーム全体としても「次に行こう」とすぐに前を向いています。
というのも、Gaikaはもともと、もう一度日本を「世界で勝つ国」にするために作った会社だからです。
そのための直近の切り口が「外貨を稼ぐ」ことであり、もっと具体的に言えば、「世界を相手に価値提供をして、やっぱり日本ってすごいよねという実績を作りたい」んです。Gaikaのミッションは「外貨を稼ぎ、日本の未来を創る」。EcoWear事業も、その数ある手段のひとつに過ぎません。

坂本:もともと僕たちが執着しているのは特定の事業モデルではなく、「日本が稼ぐ外貨の総量を増やす」ことです。
だからこそ、1つの手段が壁にぶつかっても、そこに固執することはありません。大事なのは、日本を勝たせるための仕組みを社会実装することなので、目的を達成するためのアプローチは他にいくらでもつくることができます。
今回のEcoWear事業に関しても、衣服の回収自体は実現できたので、一時滞在者が衣服をすぐに廃棄してしまう課題は解決できたと思っています。
とはいえ、回収するだけでは服がただただ溜まっていく一方です。そのため現在は、一時滞在者が集まる場所と連携し、ミニマムな規模からでもしっかりと服を循環させる仕組みを作っています。
また、別の国から衣類リユースの要望が届いたりもしているので、最終的にどんな形になるかはわかりませんが、今後も進めていきます。
──「日本を、もう一度『世界で勝つ国』にする」。今回の事業開発イベントで、Gaikaが弱冠20歳のメンバー構成でその壮大なパーパスに向けて未知へ飛び込み、圧倒的なスピードで実質的な事業を創り出せる集団であるということが実証されました。
生まれる前に存在した、“世界から尊敬される日本”へ

坂本:今回のことを受けて、改めてGaikaの活動を議論しました。
もともと私や清原、水島の世代は、「日本の1人あたりのGDPがG7で最下位になった」「経済成長率が下がった」といったニュースばかりを聞いた世代で、ポジティブなビジネスの話題はほとんどなく、「日本は下り坂」ということが刷り込まれて育ちました。
海外に出ると、友人から「最近の日本のビジネスって勢いがないよね。有名なのは、日本がイケてた時代に生まれた自動車くらいでしょ」と言われたことがあります。
私たちと同じように「Japan as Number 1」の時代を知らない海外の同世代からすると、今の日本は「東南アジアと同じくらいの値段で楽しめる、コスパの高い国」に映っているんです。角度によっては、本当にそういう国になってしまっている。それがめちゃくちゃ悔しかったんです。
そうした状況から抜け出し、「日本ってやっぱりすごい」「日本人ってさすがだよな」と思われる未来を創るためにつくったのがGaikaなんです。
中長期的に「外貨獲得」を通して、『日本をもう一度「世界で勝つ国」にする』というパーパスを実現していきます。

──EcoWear事業以外にはどのような取り組みをされているんですか?
清原:現在は北海道浦河町の商工会議所の会長とタッグを組んで、町の関係人口を増やす町おこしや、他にも外貨獲得を目指すプロジェクトを参画・支援しています。
また、私と坂本、そしてメンバーの上柳(取締役 兼 CFO)のルーツがある静岡県でも、外国人富裕層を呼び寄せる企画など、いくつかの事業を同時並行で進めています。その関係で私は2026年の4月以降は私自身が静岡に居を移します。
坂本:あとは政策金融公庫やエンジェル投資家に融資の相談なども進めています。
──最後に、来年の「New Business Boot Camp」のチャレンジャーや、起業家を目指す若者へメッセージをお願いします。

水島:私たちは「圧倒的に行動する」ことを重視し、100名にアンケートを取ったり、オーストラリアでもたくさんの関係者に話を聞いたりしたおかげで、高い精度で検証ができ、事業が進んでいったんだと思います。ですから、来年のチャレンジャーは、素早い行動力で我々以上にたくさん検証すれば、きっとうまくいくはずです。
清原:若者が経験豊かな大人に勝つは、とにかく動くしかありませんから、とにかく圧倒的に行動することはとても重要だと思います。
また、私自身、以前は“起業家といえばキラキラしていてお金を持っていて……”というイメージでしたが(笑)、実際にGaikaで坂本や水島と一緒に事業開発を経験して、起業家は“目指す世界に向けて、一番泥臭いことを当たり前に遂行できる人”だと感じました。
地味なことでも、成果ができるまで寝る間も惜しんで取り組む姿勢が不可欠だと思っています。
坂本:大きな未来を見据えて本気で事業化に取り組んだらとても楽しめると思います。
実はGaikaを立ち上げるにあたり、AlphaDrive代表の麻生さんから受けた影響がものすごく大きかったんです。
今の僕らはスケールも立ち位置も全然異なりますが、「日本経済を元気にしたい」という根っこの想いはAlphaDriveと完全に一致していると思っています。
だからこそ、自社での事業展開はもちろん、他社の支援を通じても、外貨を獲得する事業を次々と社会実装していきます。日本経済に与えるインパクトで、最低でもAlphaDriveを越える。それが今回の挑戦の機会をくださった麻生さんへの最大の「恩返し」であり、僕からの「宣戦布告」です。
──Gaikaのメンバーは全員、坂本さんと同世代だといい、“世界一の経済大国だった日本”を全く想像できない若者たちが、かつての日本の姿を取り戻すために躍動している。
彼らの恐れを知らず、難局に懸命に立ち向かう姿勢こそ、日本を下り坂にしてしまった私たち大人世代が手本にしなければならないヒントがあるはずだ。
photographs by Kohta Nunokawa / text by Koichiro Tayama
