【NTTドコモ発】企業が子どもを育てる。「はたらく部」「HR高等学院」で、大企業発IPOを目指す

Ambitions編集部

──日本をアップデートするのは、スタートアップだけじゃない。 スタートアップシーンが活況な中、特に2020年代から盛り上がりを見せているのが、企業内の「新規事業」だ。伝統的な日本企業の中から事業が続々と生まれ、自社のアセットを最大限に活用し、一気に社会実装を進める。そんなダイナミックな変革が起きつつあるのだ。 新規事業と社内起業家(イントラプレナー)を表彰するために誕生したイベントが、「日本新規事業大賞」だ。2025年5月8日「Startup JAPAN」の中で開催された第二回イベント最終審査7事業のピッチの模様を、集中連載で届ける。 第六弾は、NTTドコモ発スタートアップRePlayceの山本将裕氏のピッチを紹介する。彼の運営する「はたらく部」「HR高等学院」には、日本の教育が見落としてきた、個人が自立し、社会を生き抜く能力を育むプログラムがあった。

若者の自己肯定感や自立心を育む、新しい教育の形

ある調査によると、日本の中高生が抱く自己肯定感は世界でも最低レベルにある。将来に対してネガティブな考えを持つ若者が多く、親族や学校の先生以外に進路の相談する高校生は、全体の2%程度しかいない。また、学力などは世界でも高い水準だが、「物事を自立的に考える力」は34カ国中で最下位だという。

日本の教育業界には、このような大きな課題があり、既存の学校教育に疑問を感じる保護者や若者は多く、通信教育に通う生徒は年々増加。それに伴い一人あたりの教育費は直近7年で2倍以上に増えており、教育の市場は拡大している。

こうした中で、もともと“人と向き合うこと”と、“新規事業開発”、社内起業家育成に強い関心をもっていた山本氏は、教育における課題を解決するため、2022年にNTTドコモの新規事業プログラムを活用してオンラインのキャリア探究サービス「はたらく部」を立ち上げ。その後NTTドコモからスピンアウトして「RePlayce」を設立。そして2025年には通信制高校サポート校「HR高等学院」を開校した。

特徴は、中高生向けに開発した「探究学習」「キャリア教育」の教材や、授業の質にこだわった「社会人講師」のネットワーク。自社サービスでの提供はもちろん、これらのアセットを自治体や学校、学習塾などへ提供するBtoBビジネスも行なっている。

「2025年4月に開講したHR高等学院は、オンラインと通学を組み合わせた、高卒資格を取得できる学校です。優れたキャリアを持つ大人たちと対話をしながら、アントレ教育やクリエイティブやテックなど生徒自ら興味を持ったプロジェクトを進める探究学習を中心にしており、新しい教育の形を提供しています。進路についても、就職・起業や大学受験のサポートをしたり、推薦枠を持つ71の海外大学への留学支援などを行なったりしています」

教育業界でイノベーションを起こし、大企業発でありながらIPOを目指す

開校して間もない「HR高等学院」だが、入学した元不登校の生徒からは、「(これまでとは反対に)家に帰りたくない」という声が寄せられているほど満足度の高い教育を提供しているという。また、「はたらく部」のサポートにより、有名大学の合格を果たした生徒もいるなど、教育機関として生徒の人生に深く寄り添った幅広い実績を残している。

事業としては、スピンアウトし複数のサービスを同時に展開するコンパウンドスタートアップとして事業を多角化し、大企業発の新規事業としては珍しく、IPOも視野に入れているという。

審査員との質疑応答

Q:NTTドコモのアセットを何か活用されていますか?

A:NTTドコモは教育分野とは少し距離がありますので、具体的に何かアセットを活用していることはありません。ただ、協力してもらっているという部分でいうと、出資を受けていることや営業チャンネルでの連携などがある点です。

#新規事業

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