【OneAI石川真也】福岡と台湾を越境し、マーケティングクリエイティブ生AI領域で世界一を目指す

田村朋美

飛躍するスタートアップに共通することはなんだろうか? 福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」事務局長の池田貴信氏は、重要なポイントとして「人」を挙げる。 シリーズ「飛躍するスタートアップ」では、福岡に生まれ、飛躍するスタートアップのファウンダー、その「人」に迫る。 第13回は、「日本・台湾発のAIで世界を切り拓く」をテーマに掲げ、マーケティングクリエイティブ生成AI事業を展開する株式会社OneAIの石川真也氏。創業時の事業からピボットに成功し、AIチャットマーケティングを日本やアジアに提供している。具体的にどのような事業を展開しているのか。話を伺った。

石川真也

株式会社OneAI 代表取締役CEO

2007年からソフトバンク株式会社でデジタルマーケティングに携わり、DMP運用事業立ち上げなどを歴任。並行してソフトバンクアカデミアで経営を学ぶ。2015年に株式会社OneAi(旧株式会社人々)を創業。AIチャットマーケティング事業を運営すると共に、データサイエンティストとしてAI開発もリードする。グロービス経営大学院MBA修了。

High Growth Program

Fukuoka Growth Networkに加入するスタートアップのなかから、さらなる成長が見込まれるスタートアップを選抜し、定期的なコミュニケーションを通じて、必要な支援内容をカスタマイズして提供する選抜型プログラムだ。

2025年度High Growth Program採択企業

BoutiqueResidence&Co.株式会社 OYASAI株式会社 コースタルリンク株式会社 BeeInventor株式会社 KYEs株式会社 株式会社トイポ 株式会社OneAI カプセルジャパン株式会社

外貨を稼いで日本経済を良くするために

日常生活に溶け込んでいる“インターネット通信販売”。そこに着目したのがOneAIの石川氏だ。長年デジタルマーケティングに携わってきた石川氏は、「外貨を稼いで日本経済を良くする」ために、日本企業の越境ECを支援するビジネスを始める。

「私は失われた30年と共に育ってきた世代でもあり、これからの日本経済を良くしたい思いをずっと持っていました。海外市場で私にできることはデジタルマーケティングを生かしたビジネス。そこで、情報革命で誰もが国境を越えて活躍できる世の中にすべく、日本企業のアジア通販運営を支援する会社を2015年に東京で創業しました。広告配信や物流サポートをする中で、現地に拠点がないと不便な点が多々あり、2018年には台湾法人も設立しています」

越境EC支援から見えたビジネスチャンス

日本企業のアジア通販運営はニーズがあるものの、越境ECの支援事業は労働集約型のビジネスモデルのため、Jカーブを描くような成長は見込めない。そこで、スタートアップらしい成長曲線を描くために事業のピボットを決断する。着目したのは、アジアで日本以上に活用されているSNSチャットコマースだ。そこにAIを活用したAIチャットマーケティングを開発し、提供する覚悟を決めた。

「越境ECを支援する中で、台湾は日本以上にLINEを活用し、通信販売もLINEに集約される様子を目の当たりにしました。だから、LINE内でのコミュニケーションをAIチャットに置き換えることに商機があるのではないかと考えました」

2015年に創業し、2019年に事業をピボットする決断をした石川氏。そこからAI開発に長けた仲間を加えて高度なAIチャットを開発し、2020年からAIチャットマーケティング事業を展開することになる。この事業は、Webサイトを離脱したユーザーをLINEなどのSNSに誘導し、パフォーマンスの高いクリエイティブの生成AIによる接客で商品購入や申し込みなどにつなげるというものだ。

特徴は、AIがSNSでコミュニケーションを重ね、ユーザーに最適なオファーや商品提案をするため、高いコンバージョンを達成すること。コンバージョンに応じた成果報酬型で提供するビジネスモデルで、通販、金融、ジム、エステ、不動産など幅広い業種での導入が実現している。

「2020年から台湾で事業をスタートさせ、日系企業にAIチャットの提案を始めると年間3000万円の売り上げが立ちました。そこで2021年からは台湾の現地企業にもアプローチを開始し、売り上げを堅調に伸ばすことに成功。その後は、日本・香港・シンガポール市場での提供も開始し、OneAI独自のクリエイティブ生成AI技術は日本と台湾で特許を取得するに至りました」

コロナショックを受けるもAIチャットで巻き返す

順調に見えるOneAIの軌跡だが、事業をピボットするタイミングで外部要因による大きな困難に見舞われている。

「2019年末から事業をピボットすべく資金調達を始めた直後に、COVID-19の感染拡大が始まりました。当時の事業はまだ越境EC支援。ロックダウン等により世界中の物流がストップしたことで、売上の7割を失うことになったんです」

いわゆるコロナショックだ。一気に赤字に転落するも、直前の資金調達が間に合って結果的には生き延びることはできた。しかし、タイの拠点はたたむことになり、同時に現地メンバーも雇用終了という辛い意思決定をすることになった。

「精神的にかなりしんどい時期でした。ただ、AIチャットマーケティング事業の準備をしていたので、越境ECによる売り上げが下がっても新規事業を立ち上げられたのは不幸中の幸い。意思決定が少しでも遅れていたら危うかったと思います」

AIチャットマーケティング事業により息を吹き替えしたOneAIは、そこからの2〜3年で事業を大きく成長させることに成功した。そして、2023年に実施したシリーズAの資金調達を機に東京にあった本社を福岡に移すことになる。

「シリーズAは福岡を拠点とするベンチャーキャピタルGxPartnersにリードいただいたことと、福岡市はスタートアップ育成とアジア進出の支援が手厚いことから、東京の本社を福岡に移し、福岡からアジアでの事業拡大を目指す決断をしました」

石川氏が福岡に拠点を移して約2年。スタートアップを大きな産業に育てようとするビジョンと具体的な実行力を県や市が持っていることに魅力を感じているという。

「東京はスタートアップの数が多いから、一社一社への支援が薄くなります。でも福岡は一社辺りの支援の量が多く、熱量も高いなと実感しています。FGNというスタートアップ支援のインフラが整っていて、High Growth Programなどで手厚く支援され、海外展開のための展示会サポートなどもある。費用面や人的資源面、インフラ面など全てにおいて東京では受けたことのなかったサポートを受けています」

クリエイティブ生成AIで世界一の日本企業を目指す

新たな事業、新たな拠点でリスタートを切り、業界のトップを走るOne AI。今後の展開をどう考えているのだろうか。

「現在は、AI接客で顧客獲得につなげるAIチャットマーケティングの『ChiChat』と、生成AIによるクリエイティブファウンドリサービスを行う『OneDesign』、AIモーションポップアップで離脱を防ぐ離脱防止AI生成の『OneCatch』、撮影コストゼロでよりインタラクティブな顧客体験を提供するAI接客ライバー『OneLive』を展開しています。今後は生成AIで作るクリエイティブをライブコマースやメタバースコマースの領域に展開したいと考えています。LINEコマースの世界から次元を増やし、発展させていくことでプロダクト事業を成長させていきたいですね」

また、OneAIは米国などのマーケットにも拡大予定だ。バーティカルな生成AIで、世界一になる日本のプレイヤーを目指したい、そうなれるポジションにいると信じていると石川氏は語る。

「今後数年で人間を超えるようなAIが登場するでしょうし、メタバースやブロックチェーンなども劇的に進化すると思います。そうなったときに我々も高いレベルで成長できるよう、2030年までには上場を果たしておきたいと考えています。上場するということは、プライベートカンパニーではなく世界中の投資家が投資できる企業になるということ。公的な会社の社会的責任を全うすることで、日本経済の発展に人生をかけたいです」

日本経済を良くしたい――。初志貫徹の精神を貫く石川氏の活動に欠かせないアイテムは、テニスのラケットだ。福岡と台湾を行き来し、多忙な生活を送っている石川氏だが、福岡でも台湾でもプライベートではテニスを楽しんでいる。

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