
これは、スター社員でもなんでもない、普通のサラリーマンの身の上に起きた出来事。ひとりのビジネスパーソンの「人生を変えた」社内起業という奇跡の物語だ。
「やったー!!!」
審査結果発表の瞬間、有田の歓喜の叫びが会場に響き渡った。増井も、驚きと安堵、そして喜びが入り混じった表情で、大きく息を吐き出した。鈴木は目頭を熱くし、森本は満面の笑みで増井を見つめていた。
「信じられない!本当にグランプリを取れたんだ!」
増井は、まだ興奮冷めやらぬ様子で、トロフィーを握りしめていた。長かった戦い、幾度となく訪れた困難、そして諦めなかった彼らの努力が、ついに実を結んだのだ。
石井事務局長が、温かい笑顔で彼らに近づいてきた。
「増井君、おめでとう。君たちのプレゼンテーションは素晴らしかった。心から感動したよ。」
石井の言葉は、増井たちの心に深く響いた。彼は、彼らの挑戦を、誰よりも近くで見守り、支えてくれた存在だった。
「ありがとうございます、石井さん! 石井さんのサポートなしでは、ここまで来られませんでした!」
増井は、心からの感謝を込めて、石井と握手を交わした。
祝賀パーティーは、華やかで熱気に満ち溢れていた。増井たちは、多くの社員から祝福され、彼らのプロジェクトへの期待の大きさを感じた。
「増井さん、本当にすごいわ! あなたのプレゼン、最高だったわ!」
「メロディーアシスト、本当に製品化されるんですね! 楽しみです!」
「増井さん、あなたたちは、会社の希望の星よ!」
温かい言葉の数々が、増井たちの心を満たしていった。彼らは、自分たちが、会社全体から期待されていることを実感し、改めて責任の重さを噛み締めた。パーティーも終盤に差し掛かった頃、社長が、増井たちのテーブルにやってきた。
「増井君、君たちのチームは、本当に素晴らしい! メロディーアシストは、世界を変える可能性を秘めている! 会社は、君たちのプロジェクトを、全力で支援する!」
社長の力強い言葉に、増井たちは、身が引き締まる思いがした。
「ありがとうございます、社長! 私たちは、必ず、期待に応えます!」
増井は、力強くそう宣言した。
翌日、増井たちは、石井事務局長と共に経営会議に出席した。議題は、メロディーアシストの事業化計画だ。
「増井君、君たちの事業計画書を拝見したが、非常に素晴らしい内容だ。会社としては、君たちのプロジェクトに、10億円の投資を行うことを決定した。」
社長の言葉に、増井たちは息を呑んだ。10億円という金額は、彼らの予想をはるかに上回るものだった。
「10億円…!?」
有田は、驚きを隠せない。
「ありがとうございます! 社長! 私たちは、必ず、その期待に応えます!」
増井は、改めて決意を表明した。
石井も、満足そうに頷いた。
「増井君、君たちは、これから新たな船出を迎えることになる。困難もたくさんあるだろう。しかし、諦めずに前に進んでほしい。私は、君たちをずっと応援している。」
石井の言葉は増井たちの心に温かい光を灯してくれた。
増井たちは、早速、事業化に向けた準備を開始した。まずは、小規模な生産設備の導入だ。彼らは、北山製作所と連携し、高精度なアクチュエーターを安定して供給できる体制を構築する必要があった。
「五十嵐さん、北山製作所との契約は、順調に進んでいますか…?」
増井は、クロスロード・テクノロジーのオフィスで、五十嵐に尋ねた。
「ええ、順調です。北山製作所の健二さんも、やる気満々ですよ! 彼も、このプロジェクトに、大きな期待を寄せています。」
五十嵐は、笑顔で答えた。
「それは、心強いですね! 彼らの技術力があれば、きっと、素晴らしい生産ラインを構築できるはずです!」
増井は、期待に胸を膨らませた。新たな仲間、新たな技術、そして10億円という大きな投資。増井たちは、希望に満ちた未来へと力強く歩みを進めていた。彼らの船は、今まさに大海原へと漕ぎ出そうとしていた。