2023年12月、Ambitions編集部による主催イベント「Ambitions Fes」が渋谷・TRUNK(HOTEL)で開催された。会場には第一線で活躍するビジネスパーソンや起業家など、およそ130人が集結。Ambitions誌面に登場した有識者のトークセッションや、異分野の交流が生まれたネットワーキングなど、終始熱気が溢れた。盛況となったイベントの模様をお届けする。
乾杯の音頭を取ったのは、法政大学教授の田中研之輔氏だ。乾杯酒として、海外からも注目を集める日本酒ブランド・SAKE HUNDREDの手がけるスパークリング日本酒「百光」が振る舞われた。ファウンダーの生駒龍史氏は、「百光のラベルに用いられている”吉祥文様”には、繁栄や長寿への祝いや願いが込められています」と説明した。
やるか?死ぬか? 想像力に欠かせないのは「危機感」
トークセッションでは、Ambitions誌面に登場したことがきっかけとなり、お笑い芸人の安田大サーカス クロちゃん、三井住友海上 ビジネスイノベーション戦略担当部長の藤田健司氏、CGOドットコム 裏ボスのChico氏による異色のコラボレーションが実現。モデレーターを務めたのは、元フジテレビアナウンサーの境鶴丸氏だ。
本セッションでは「タメ語禁止」「あだ名で呼び合う」「10秒以上の沈黙禁止」といった、CGOドットコムが企業内コミュニケーション促進のために展開する「ギャル式ブレスト®︎」のルールを適用。三者それぞれの「苦境を突破するための想像力やクリエイティビティ」について、境氏が切り込んだ。
藤田氏は、「NFTアート専用保険」や「小型船自動航行保険」など、世の中にない保険を次々と生み出している保険業界のパイオニア。新しい保険を生み出し続ける理由を、「既存の保険業界のポートフォリオに危機感を覚えたから」だと話す。
「現在、国内損保会社の売上の約6割が自動車に由来する保険で構成されていますが、自動運転やMaaS、シェアリングの登場によって10年後にはこのポートフォリオは盤石でなくなるかもしれません。保険会社が生き残るには新しい価値を創出し続けるスタートアップ企業と協力して、新たな保険を生み出すしかないのです」(藤田氏)
多くの承認を得ることが求められる大企業で、いかにして新しい保険を創出し続けるのか。未来のリスクを想定する藤田氏の思考法が見えてくる。
「ドローンを飛ばすと墜落するかもしれない。所持している暗号通貨が何者かに盗まれる可能性もある。未来の技術が当たり前の世界になったとき、どんなリスクが生じるのかをスタートアップのみなさんと一緒に考えます。それと同時に『リスクに対応できないと大変なことになる。手つかずだと市場がいつまでも成長しない』と、社内のメンバーと危機感を共有しています。外の世界や未来の一端を見せることで、まわりを驚かせているような状況なのかもしれません」(藤田氏)
クロちゃんは、これまでにバラエティ番組で数多くの過酷なロケを経験してきた。なかでも苦手な仕事に直面したときには、「やるか?死ぬか?」という究極の二択を自分に突きつけて一歩踏み出すと説明する。
「ニュージーランドにある高さ134mの崖からバンジージャンプをするというロケがありました。高所恐怖症だし、当時肋骨にヒビが入ってたので、ロケ中はずっと飛ぶのを拒んでいました。スタッフからロケ時間が残り5分だと迫られたとき、『飛ぶか?死ぬか?』と二択を自分に突きつけたら、意外とすんなり飛べたんです。スムーズすぎてスタッフに怒られましたが(笑)。どんないやなことでも、死ぬことと比べたらそこまで辛く感じないですよ」(クロちゃん)
自分軸を貫くギャルがもつ「受け止める力」
CGOドットコムのChico氏によると最近、ギャルのあいだではスピリチュアルなことにまつわる話が流行っているそうだ。その理由について、「ギャルなりの想像力があるのではないか」と解説する。
「ギャルは自分の思い通りにならないことがあったら、『それ、悪霊のせいじゃない?』というようにすぐ割り切るんです。自分でコントロールできない範囲のことは考えすぎない。その一方で、ギャルはスタイルや信念を大事にします。“仕方のないことを仕方がないこと、と受け止める力”があるからこそ、自分の内側にある思いを貫き通せる子が多いんだと思います」(Chico氏)
「自分がコントロールできないことへ意識を向けない」というギャルの思考法に、クロちゃんが共感する。クロちゃんはテレビ番組の撮影に臨む際、台本を徹底的に読み込むなど自分にできる準備は入念に済ませることで、「場がスベったら、それは企画・台本に問題がある」と割り切るという。
「例えば、学校の先生に厳しく怒られたとします。そのときは、『この先生はそういう厳しい言い方しかできない』『きちんと教えられない』と一回、相手のせいにするんです。心に余裕が生まれると、次は怒られないように予習しようと前向きなアクションにもつながります」(クロちゃん)
最後は「Ambitions」というメディアの名前にちなみ各々の「2024年の野心」について語ってもらい、セッションは幕を閉じた。
クロちゃん「プロデュースしているアイドルのコンサートを成功させる」
藤田氏「2年後に迎える定年へ向けて、新たなチャレンジを踏み出す」
Chico氏「日本ならではのギャルマインド(=バイブス)を世界へ」
経営・地域創生・推し活まで、あらゆる個性がつながりを生む
異色のトークセッションのほかにも、イベント当日には『Ambitions』とその地域版『Ambitions FUKUOKA』を題材に、3つのセッションが催された。
・GREAT POTENTIAL OF FUKUOKA
「福岡のビジネス・ポテンシャル」について、現地への企業誘致を進めてきた行政担当者、実際に福岡でビジネスを立ち上げている経営者が語り合うセッション。人気リアリティショー『バチェラー・ジャパン』で2代目バチェラーとして一躍脚光を浴びた、株式会社GHOST代表の小柳津林太郎氏らが登壇。会場では福岡名物の「とりかわ」も振る舞われた。
・ビジネスリーダーによる、日本トランスフォーメーション論
激しい変化が起きた2023年、あらためて日本の競争力はどこにあるのか。そして、女性の自己実現はどこまで進んだのか。メディアジーン創業者の今田素子氏、NECでカルチャー変革を担う清水智美氏、シナモン Co-CEOの平野未来氏が登壇し、展望と未来に向けた野心を語った。
本セッションのレポートはこちら
・「野心」ピッチセッション
これまでの『Ambiitons』誌面に登場した、パーソルキャリアで広報を務める矢儀田汐理氏、ZeBrand 元CEOの菊池諒氏、 エッグフォワード代表取締役社長の徳谷智史氏が登壇。それぞれが掲げる「Next Ambitions=2024年に燃やしたい野心」を90秒間でプレゼンした。
Ambitionsでは今後も、記事をはじめとするコンテンツやイベント、コミュニティ運営を通じて、さまざまなビジネスパーソンの心に火を灯していきたい。
Ambitions Vol.4
「ビジネス「以外」の話をしよう。」
生成AIの著しい進化を目の当たりにした2023年を経て、2024年。ビジネスの新境地を切り拓くヒントと原動力は、実はビジネス「以外」にあるのではないでしょうか──。すべてのビジネスパーソンに捧げる、「越境」のススメ。
text by Reo Ikeda / photographs by Ryosuke Sono / edit by Tomoro Kato