
沖縄発のテーマパーク事業を展開する株式会社ジャパンエンターテイメント(以下、ジャパンエンターテイメント)と、国際大学である立命館アジア太平洋大学(以下、APU)は、2024年10月21日、産学連携に関する記者会見を実施した。両者は、日本の観光産業を牽引する高度観光人材の育成を目的とした包括協定を締結。2025年に沖縄北部で開業予定の新テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」プロジェクトを控え、実践的な長期インターンシッププログラムを展開することで合意した。 「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」をV字回復させたマーケターであり、株式会社刀の代表を務める森岡毅氏が、約700億円を投じて建設中だとして話題の「JUNGLIA」。今回グローバル人材の育成を目指すAPUとの連携を通して、九州・沖縄全体の起爆剤となるような日本の観光業界のグローバル化ならびに、地域づくり・街づくり・価値創造ができるプロデューサー人材の育成を行うことを発表した。

「沖縄から日本の未来をつくる」。テーマパーク事業に込めた想い
2018年6月の設立以来、沖縄県名護市を拠点に「JUNGLIA」の開業準備を進めている、ジャパンエンターテイメント。同社は「沖縄から日本の未来をつくる」を理念に、エンターテイメントの力で地域の価値を消費者の価値に昇華し、地域社会への貢献を目指している。
代表取締役CEOの加藤健史氏は、沖縄北部地域の観光産業が抱える「人材不足」と「他業界より低い所得」という二つの課題を指摘。その解決策として、地域経済の活性化と雇用創出を両立させる「高度な観光人材育成」の必要性を訴えた。
多様性あふれる国際大学、APUの強み
APUは、国際性豊かな教育環境とダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)を推進する大学として知られている国際大学だ。学生の約半数が外国人留学生で構成され、112の国と地域から集まった学生が、互いの文化や価値観を尊重し合いながら学んでいる。
APU学長の米山裕氏は、長期インターンシッププログラムを通して、多様なバックグラウンドを持つ学生たちが、社会の分断を乗り越え、多文化共生の社会を創造する「D&I人材」として活躍することを期待しているという。また、地域社会との連携を強化し、教育・研究機関として社会課題の解決に貢献していく姿勢を示した。

超実装型インターンシッププログラムで未来の観光業界を担う人材を育成
今回の産学連携の目玉となるのは、ジャパンエンターテイメントとAPUが協力実施する、超実装型のインターンシッププログラムだ。従来の1日から2週間程度の短期的な就業体験型とは一線を画し、長期実践と教育的要素を兼ね備えた内容となっている。
参加学生は、4カ月間という長期間にわたり、「JUNGLIA」の運営に携わりながら、実践的なスキルを習得する。プログラムは、マーケティング会社・刀のマーケティング力とエンターテイメントで培ったノウハウを軸とする予定で、まず座学でマーケティング戦略や事業戦略、オペレーション戦略などを学んだ後、「JUNGLIA」内のアトラクション、レストラン、ショップといった現場に配属。顧客ニーズの分析、課題の抽出、改善策の提案、実行、評価までを一貫して行うことで、消費者価値を生み出すための実践的なマーケティング力を養うことを目的としている。
さらに、本プログラムはAPUの授業の一環として認められており、参加学生は単位を取得することができる。長期実践を通じて得られた経験は、大学の学びと接続されることで、より深い学びへと昇華することが期待される。

段階的なプログラム拡大で全国各地の学生へ機会提供を目指す
今後の展開として、まず2024年は、県内外の大学と連携しプログラムのモデルケース構築の年と位置付けている。少人数での試験的なインターンシップを通して、プログラム内容や運用方法を検証し、大学との連携体制を強化していく。2025年のテーマパーク「JUNGLIA」開業後は、いよいよ本格始動。まずは20名規模でインターンシップ生の受け入れを開始し、事業拡大に合わせて受け入れ人数も増加させていく予定だ。
2026年には、近隣のホテルや観光施設など、地域の観光事業者との連携を強化し、学生に多様な実践の場を提供。さらに、プログラムに参加する大学も増やし、より多くの学生に学習の機会を提供していくとしている。受け入れ体制の強化として、同年には100名規模の宿泊施設と研修施設も開設予定だ。
そして2027年からは、全国展開へ。多様な観光事業者と連携し、全国各地の教育機関と連携することで、プログラムの規模をさらに拡大。それと同時に、社会人参加の受け入れも開始し、リカレント教育の機会も提供していくと発表した。

画期的な産学連携、観光業界の未来を創造
ジャパンエンターテイメントとAPUの産学連携は、観光業界の人材不足の解消と、質の高い観光人材の育成という課題解決への道を切り拓く画期的な取り組みといえるだろう。実践的な長期インターンシッププログラムを通して、学生は即戦力となるスキルを身につけ、観光業界で活躍する未来を創造する。
本連携の成果は、両者に新たな価値をもたらすだけでなく、観光業界全体の活性化、ひいては日本の観光立国としての地位向上にも貢献することが期待される。

edit by Yuna Nagahama