日本全国・世界を魅了する福岡のカルチャー。大きなムーブメントの中心には、常に「人」がいる。2025年、今の福岡の食や文化を象徴するキープレーヤーを特集。本記事では、その中からLINEヤフーコミュニケーションズの取り組んだ「屋台DX」の裏側に迫る。
南方尚喜
LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 スマートシティ本部 本部長
依田所花
LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 スマートシティ本部 スマートシティ企画部 コミュニケーションデザイン1チーム
福岡の食カルチャーを代表する「屋台」。LINEヤフーコミュニケーションズは、屋台文化のアップデートを担う存在だ。
「2018年、屋台のキャッシュレス化に当社の技術を提案したことがプロジェクトのきっかけでした。以降、長浜屋台街での実証実験を経て、現在は市内全域で屋台DXを進めています」（南方尚喜氏）
本プロジェクトを語る上で欠かせないのが、依田所花氏だ。京都出身、新卒で同社に入社した依田氏は、福岡の屋台に魅了された。
「当時、福岡に知り合いがいなかったのですが、たまたま入った屋台で店主や他のお客さんと仲良くなれたんです。別の日に行くと、私のことを覚えてくれていたり。そういう温かさにハマって、多い時は週に3回くらい通っています」
ひとくちに「屋台」といっても、メニューも個性もさまざま。しかし外からはその違いが見えにくく、一部の屋台に観光客が集中していた。これを解消するため、プロジェクトチームは市内約100軒の屋台データベースづくりに挑んだ。
「グルメ情報そのものは、以前から存在しています。しかしただWeb上のデータをまとめただけでは、ユーザーは使いません。僕らはITサービスをつくりたいのではなく、屋台という場での体験やコミュニケーションを向上させることを目指しています」（南方氏）
こだわったのが「検索では得られない情報」。屋台一軒一軒にアンケートを実施し、営業時間やメニューに加え、店主の特技・趣味といった情報まで拾い集めた。「だって、何気ない会話こそが屋台の魅力だから」と依田氏。
このデータを土台に、屋台の案内に特化したLINE公式アカウント「FUKUOKA GUIDE」に搭載したチャットボット機能「AIおいちゃん」を企画。ユーザーは目的や好み、さらには店主の性格などさまざまな切り口で、屋台を探すことができる。
さらに「せっかく訪れたのに屋台が出ていなかった」というユーザーの声を拾い、屋台にIoT電球を導入。営業状況をリアルタイムで確認できるようにした。LINE公式アカウント「FUKUOKA GUIDE」の友だち数は口コミで増え、現在（※）3万8000人以上。福岡を紹介するスタンダードサービスに成長している。
「屋台は福岡のシンボル。多くの人が福岡の夜を楽しめるよう、サービスを進化させていきます」（南方氏）
「屋台の魅力は、はじめての人でも気軽に立ち寄れる温かさ。リアルの雰囲気を残しつつも、ITを使って多くの人たちに楽しさを伝えたいです」（依田氏）
プロジェクト紹介動画はこちら
※ 2025年4月時点
text & edit by Keita Okubo / photoglaph by Shogo Higashino
Ambitions FUKUOKA Vol.3
「NEW BUSINESS, NEW FUKUOKA!」
福岡経済の今にフォーカスするビジネスマガジン『Ambitons FUKUOKA』第3弾。天神ビッグバンをはじめとする大規模な都市開発が、いよいよその全貌を見せ始めた2025年、福岡のビジネスシーンは社会実装の時代へと突入しています。特集では、新しい福岡ビジネスの顔となる、新時代のリーダーたち50名超のインタビューを掲載。 その他、ロバート秋山竜次、高島宗一郎 福岡市長、エッセイスト平野紗季子ら、ビジネス「以外」のイノベーターから学ぶブレイクスルーのヒント。西鉄グループの100年先を見据える都市開発＆経営ビジョン。アジアへ活路を見出す地場企業の戦略。福岡を訪れた人なら一度は目にしたことのあるユニークな企業広告の裏側。 多様な切り口で2025年の福岡経済を掘り下げます。