
2026年7月31日に、一般社団法人シェアリングエコノミー協会主催の「シェアリングシティフォーラム2026 〜シェアで日本列島の未来を共創する〜」が福岡県福岡市で開催された。 本記事では、「観光立国日本の未来」をテーマに語られたトークセッションをご紹介。 日本の観光はインバウンド回復を背景に地域経済を支える成長産業となる一方、人手不足や宿泊・交通・体験不足、住民生活との両立といった課題も顕在化している。そこで、自治体・観光事業者・プラットフォームの視点から、地域資源を活かした共創型観光モデルの可能性について語られた内容をお届けする。
Speaker
大分県 別府市長 長野恭紘氏
Airbnb Japan株式会社 公共政策本部長 大屋智浩氏
株式会社JTB 執行役員ツーリズム事業本部 九州エリア広域代表 篠崎和敏氏
株式会社NearMe 代表取締役社長 髙原幸一郎氏
Moderator
株式会社AsMama 代表取締役CEO シェアリングシティ推進協議会 共同代表 甲田恵子氏
一つの島に9つの国が集まった九州の魅力
甲田 九州の観光の魅力やポテンシャルについて、JTBの篠崎さんはどう見ていらっしゃいますか?
篠崎 九州は名前の通り“9つの国”、筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後、日向、薩摩、大隅からできています。
甲田 7つの県だけど、9つの国。
篠崎 そうです。面白いのは、同じ福岡県でも筑前と筑豊では文化や言葉、食が違うこと。一つの島に9つの異なる文化が密集しているのは九州ならではの魅力ですし、ポテンシャルだと思っています。

甲田 そういう見方で九州を旅するのは面白そうですね。別府市長の長野さんは、別府のポテンシャルをどう見ていますか?
長野 別府は世界一の源泉数を誇る、日本を代表する温泉地です。泉質も7種類あって圧倒的に強いコンテンツを持っているのは間違いありません。
しかし課題は、観光客の宿泊日数が短いこと。そこで、長年ライバル関係にあった湯布院と「世界一の保養・大温泉郷協定」を締結しました。湯布院も宿泊日数の短さは課題だったので、一緒に国内外への共同プロモーションや滞在型観光の推進、交通網の強化などを行っています。両市が連携することで、大分県に眠っている素晴らしい観光素材を引き立てたいです。
甲田 別府と湯布院がタッグを組むのは強いですね。
長野 自分たちだけが稼ごう、自分たちの持つ素材を自分たちだけで消費していこうという考えでは、その地域はいずれ消滅することになります。だからこそ、広域で経済圏を作り、地域の人たちみんなが幸せになっていく考えが必要です。いずれは九州全体がそれぞれの強みを共有して、広域で稼げるようになっていきたいと考えています。

甲田 一方で、ハイシーズンになると宿泊先の予約が取りづらいという課題もあると思います。Airbnbの大屋さんは、そういった課題に取り組んでいらっしゃいますよね。
大屋 民泊に限らず、日本で宿泊施設を経営されている方の悩みは、限られた時期に需要が集中して、どんなに人を雇用しても全ての需要を受けきれないことです。
しかも、ピークが過ぎると人を雇用できないくらい需要がなくなるんですよね。この課題を解決するには、多くの方にゆっくりと広域に滞在してもらえる仕組みづくりが必要だと考えています。
甲田 民泊を活用すると、地域の特徴や文化、その地域ならではの食を知るきっかけにもなりますね。
大屋 その通りで、特にインバウンドの方は、旅館やホテル、民泊を組み合わせて利用される方が多いです。体験の組み合わせを多様にすることで、旅の価値を高めていきたいですね。

甲田 九州全域に滞在してもらうとなると、移動の課題も出てくると思います。公共ライドシェアに取り組まれている髙原さんは、この課題についてどうお考えですか?
髙原 どの空港でも先にフライトの予定が決まっているので、この需要をきちんと捉えさえすれば、限られた供給(移動手段)と簡単にマッチングできると考えています。
九州は地域ごとにいろんなストーリーやコンテンツ、文化があるから、1泊では全然足りません。だからこそ、タクシーやレンタカーと同じようにライドシェアを活用する文化を根付かせたい。
また、観光は広域で市町村を簡単に跨ぐため、観光目的で作った移動の仕組みは、地域で暮らす方たちの生活圏をより便利にする可能性もあると思っています。

地域や事業者、自治体が連携し、地域観光を活性化させる
甲田 JTBはAirbnbと連携し、「地域未来にぎわい工房」を創設されています。JTBとAirbnbを中心に、多様な企業・団体と共創し、観光支援の枠を越えた持続的なにぎわい創りをされていると伺いました。
篠崎 その通りで、JTBがいくら面白いストーリーやコンテンツをつくっても、宿泊施設や移動手段がないと意味がありません。
だから、Airbnbや共創パートナーと一緒に宿泊する場所や誘客の仕組みをつくっています。自分たちの街が豊かになる実感を得られると地域連携は加速するので、地域一体となってにぎわいをつくりたいと考えています。
大屋 どの地域も、みなさん自分の街の魅力は“ない”とおっしゃいます。
でも、ちゃんと“ある”んですよね。だからこそ、地域のみなさんを巻き込んで、自分たちの街の魅力に磨きをかけて、新しい価値をつくっていく。宿泊施設に限らず、地域にあるコンテンツや人を巻き込みながら、遊休資産を滞在資源に変えたいと考えています。
甲田 公共ライドシェアもご一緒されると良さそうですね。
髙原 そうですね。配車アプリでタクシーを呼ぼうと思っても、供給は足りません。
タクシーと公共ライドシェアを分けて考えるのではなく、タクシーがいなかったらライドシェアを活用するという考え方を浸透させていきたいですね。
甲田 最後に、九州の可能性について一言ずつお願いします。

長野 九州は可能性しかないと思っています。何をやるかではなく、誰とやるかを考えたら、必ず次のステップにつながるはず。ぜひ今日登壇された皆さんとタッグを組みたいです。
大屋 ぜひやりましょう! 九州は、各地に眠っている価値を磨き上げていくと、インバウンドだけでなく日本中の方に楽しんでいただける可能性があると思っています。
篠崎 そうですね。地域の隠れた魅力をいかに表に出していくかに取り組むと同時に、旅は人と人との触れ合いだから、地域の方と共に創っていくことに貢献したいと思っています。
髙原 九州の良さを多くの方に知ってもらい、体験してもらうために、一般ドライバーもタクシーも共存できる仕組みを作りたい。それがこれからの観光に大切なことだと思っています。

