【トイポ村岡拓也】行動を生み出すプラットフォームで、店舗や地域を活性化させたい

田村朋美

飛躍するスタートアップに共通することはなんだろうか? 福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」事務局長の池田貴信氏は、重要なポイントとして「人」を挙げる。 シリーズ「飛躍するスタートアップ」では、福岡に生まれ、飛躍するスタートアップのファウンダー、その「人」に迫る。 第14回は、行動データプラットフォームを通して店舗と消費者の両面でサービスを展開する「toypo」の企画・開発・運用を行う、株式会社トイポの村岡拓也氏。人の行動を促して店舗や地域を活性化させたいと語る村岡氏に、トイポの創業理由や目指したい世界観を伺った。

村岡拓也

株式会社トイポ 代表取締役CEO

1996年生まれ、福岡県飯塚市出身。高校卒業後、22歳の若さで高校時代の友人と共にトイポを創業。福岡市の成長企業を代表して2023年に内閣総理大臣との意見交換会に出席するなど活躍中。

High Growth Program

Fukuoka Growth Networkに加入するスタートアップのなかから、さらなる成長が見込まれるスタートアップを選抜し、定期的なコミュニケーションを通じて、必要な支援内容をカスタマイズして提供する選抜型プログラムだ。

2025年度High Growth Program採択企業

BoutiqueResidence&Co.株式会社 OYASAI株式会社 コースタルリンク株式会社 BeeInventor株式会社 KYEs株式会社 株式会社トイポ 株式会社OneAI カプセルジャパン株式会社

人とのつながりを軸に、人の外出を促す「toypo」

飲食店を探す際に、多くの人が参考にするのが、インスタグラムでの発信やGoogleマップなどインターネット上の口コミだ。しかし、その情報にどれだけ信憑性があるかはわからない。口コミは良かったけれど、実際に行ったらがっかりしたという経験を持つ人は少なくないだろう。

一方で、行きつけのお店やお気に入りのお店を持つ人は、その安心感からわざわざ新規のお店に足を運ぶことも少ないはずだ。

そんな店舗と人との間にある情報格差をなくし、人の行動を促して、店舗や地域の活性化につなげようとしているのがトイポの村岡氏だ。「toypo」は、ユーザーがお気に入りのお店を登録すると、そのお店のお得な情報を得られ、さらに自分の行動履歴から次の新しい行き先を提案してくれる、外出を促すユーザー向けのサービスとして2019年に立ち上がった。

そんなトイポの理念は「人とつながり、共感や喜びが広がる日常を作る」こと。この理念の背景には、村岡氏の体験があるという。

「私は福岡県飯塚市で生まれ、幼い頃に両親が離婚して母親と暮らしていたのですが、小学校に上がった直後に母親が交通事故に遭いました。そこから祖母に育ててもらったのですが、自分は特殊な環境だからと反抗したり、不登校になったりした時期があったんですね。でも友人が毎朝迎えに来てくれて学校に通えるようになりましたし、高齢の祖母が節約をしながら私を育ててくれていることもわかりました。どんなに特殊な環境でも、周りの人たちに支えられて生きてきたからこそ、私も人とのつながりを大切にして、喜びを共有する時間をもっと増やしたいと思うようになった。それをトイポでも実現させたいと考えました」

村岡氏の思いが詰まった「toypo」というサービスは、単純に登録店舗からお得な情報を受け取るだけのアプリではない。アクティブな人を増やし、興味関心の幅を広げるために、新しい行き先提案はもちろん、信頼できる人同士のクローズドなコミュニティ機能もある。

「Googleマップの口コミは偏ったもので溢れる状況になっており、本当に有益な情報を探すのが難しくなっているからこそ、信頼できる人が通う“行きつけのお店”を知るのは大きな価値だと思います。私自身、飲食店の経営者に連れて行ってもらうお店は穴場がとても多く、そういう情報はSNSやインターネットではなかなか出てこないという実体験があります。良いお店を他者との交流の中で発見して行くことができたら、自分の行動範囲も広がるので、そういうサービスを作っていきたいですね」

ファンを作る多次元の販促活動で、お店の価値を最大化

ユーザー向けのサービスとして開発されているトイポだが、店舗からの月額利用料で収益化を図っている。店舗が「toypo」を導入するメリットは、ユーザーをファンにする多次元の販促活動ができること。

顧客管理のためのダッシュボードによる分析や顧客満足度アンケート、スタンプカード、クーポン発行、プッシュ通知などリピーターを増やしファン化する施策を簡単にできるという。

「我々が実現したいのはお店の人が自分たちの得意なことに集中できる環境を作り、お店の価値を最大化することです。人から愛されて長年続くお店とは、こだわりや個性があるお店。そういうお店は必ずしも集客のためのマーケティングや分析を得意としていません。だから、その苦手な部分を我々が担いたい。そのために手軽に始められて誰でも簡単に続けられるサービスを開発しています」

ユーザー向けのアプリ上にお店のコンテンツを出す仕組みで、運用もAIで自動化できるため専門的な知識は不要。それが集客や売り上げにつながり、新規出店の際の判断材料にもなるという。

「現在はユーザー数も導入する店舗も増えています。ユーザーは利便性高くお店を利用でき、信頼できる人の情報や次の行き先提案を得られ、店舗は顧客接点の最大化を図れる。この双方にメリットを享受できる仕組みとして、今後は集客支援や広告サービス、地域情報の発信なども強化していく予定です」

資金のない状態での模索。潮目が変わったのはFGNの支援

村岡氏が起業したのは22歳のとき。創業から今までの間に大変なことはなかったのだろうか。

「ビジネスが右も左もわからない状態で起業したので、最初の1年は毎日生きていくだけで大変でした。創業メンバーから集めた300万円はあっという間になくなり、一時的に飯塚市の実家に戻って祖母の助けてもらいながらの日々でした」

村岡氏は自分が好きな飲食店や店舗、施設の運営元を調べて、電話や飛び込み営業はもちろん、手紙も書いて送った。

「手紙の打率は高く、当時22歳の若者が『こういうサービスを立ち上げたいので、話を聞いてください』と伝えると、地元の企業からの『若い起業家を応援しよう』と賛同してくれて、初期の顧客獲得につながりました」

潮目が変わったのは、FGNのメンタリングプログラムで投資家を紹介してもらい、初めての資金調達ができたことだという。当時の村岡氏は23歳。福岡市の若手起業家支援に助けられた。

「ただ、コロナ禍でスタートアップの資金調達環境は悪化していたため、調達した資金をもとに早く売り上げを作らなければと焦った時期でもありました。創業以来、ユーザー向けに使い勝手の良い機能を開発してきましたが、収益を出すには店舗向けの機能開発に注力する必要があります。その結果、売り上げは伸びたけれど、アクティブユーザが減って爆発的な成長にはつながらないという状況に陥りました」

現在はその苦しい状況からは一転し、成長路線に向けて大胆なチャレンジを始めている村岡氏。周りからの支援を受けて、店舗向けの集客サービスをはじめとした複数事業の立ち上げや、ユーザー向け課金の仕組みを整えるなど、より大きな挑戦ができそうだと語る。

全国の自治体と連携し、地域活性化につながるサービスへ

若手起業家として期待されている村岡氏。今後の目標として掲げているのは、2027年までにユーザー数1000万人超えを目指し、日本中で「toypo」が当たり前に使われる状況を作ること。

「良い店舗の来店頻度が上がり、ユーザーの興味関心が拡張する世界を作りたい。人口は減少しても消費活動が活発化すれば、社会はもっと良くなっていくはずなので、その世界観を最短で実現させたいと考えています」

また、全国の自治体と連携した地域活性化も目指す。

「各地でアンバサダーのような存在を作り、その人たちを中心に地域コミュニティを強化させ、地方創生に寄与したいとも考えています。我々の強みは単なる情報発信ではなく、割引やクーポン券などインセンティブを用意することでA地点からB地点への移動を促すことや、会員証のチェックイン機能で人流を計測できること。その強みを生かして地域の人はもちろん、観光客が地域内で回遊するための施策にも挑戦したいと考えています」

村岡氏は、「toypo」が地域を支援するプラットフォームに成長し、さらに立ち上げる複数事業が軌道に乗れば、店舗の月額利用料を下げたいと語る。

「個人店などからは費用をもらわずにサービスを開放できたら、店舗はより良い体験を提供できるようになるはず。人の行動を促し、店舗や地域を活性化させることで世の中に貢献したいです」

そんな村岡氏の活動に欠かせないアイテムは船釣りで使うルアーだ。

「採用候補者と社内メンバーを連れて船釣りに出かけることがよくあるんです。海での魚釣りを楽しみ、夜は釣った魚をお店で捌いてもらって宴会をする。仕事でもプライベートでも周りの人たちを巻き込んで楽しい時間を共有したいと思っています」

#新規事業

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