沖縄北部が、 新産業の台風の目になる【麻生要一】

Ambitions編集部

アルファドライブ地域経済研究所では、2026年後半に沖縄北部経済を徹底取材する。 それに先立ち、近年の沖縄経済の産業創出に取り組んできた、琉球アルファドライブ代表の麻生要一の声を届ける。

麻生 要一

株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO/琉球アルファドライブ代表。琉球大学 客員教授。沖縄イノベーション戦略センター アドバイザリーフェロー。アルファドライブの創業以前から沖縄の新産業エコシステム構築に携わり、起業家輩出・投資・拠点運営を通じて沖縄経済の変革を牽引する。

スタートアップ都市として開花する沖縄

沖縄というエリアは、日本を見渡しても特殊な存在だ。歴史的、文化的な側面は自明だろう。経済的な観点でも、内閣府直下の出先機関「沖縄総合事務局」があり、「国の中の国」のような意思決定力と推進力が備わっている。小規模な中に県・政府・基礎自治体・民間プレーヤー全員の顔が見える状態だ。私自身、他の地域では考えられないスピード感と連携密度を実感してきた。

沖縄はもともと開業率が高い。しかし、飲食店などの小規模の業態が多く、エリア経済の底上げには十分に寄与していなかった。この10年、多くのプレーヤーが沖縄の各地で新産業のエコシステム形成に尽力してきた。現在、沖縄のエコシステム形成は主要都道府県と肩を並べる規模に拡大。資金調達額も急上昇し、近年は地域別ランキングの上位に食い込んでいる。

象徴的なのは、「おきなわスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」の会長が県知事だという点。知事が単独で会長を務めるエコシステムは極めて異例だ。2025年には内閣府が選定する「スタートアップエコシステム拠点都市」にも選ばれた。

中身も伴ってきている。自然由来の超吸水性ポリマーを手がけるEF Polymer、「まちなか留学」などで知られるHelloWorldなど、東京の真似ではなく、「沖縄からでなければ生まれなかった」スタートアップが登場している。

「最後のパーツ」——北部こそ、最大の可能性

これまで、沖縄のスタートアップエコシステムは、中部(沖縄市・コザ)を中心に育ってきた。OIST(沖縄科学技術大学院大学)や琉球大学が大学発スタートアップ創出拠点を設置し、そのエネルギーは沖縄全土に波及しつつある。そして今、私が「最後のパーツであり、最大の可能性」と見ているのが北部エリアだ。

沖縄を走る高速道路、北の終点は名護エリア。そこから先は沖縄県民にとっても遠い存在だった。しかし面積でいえば、北部は沖縄県全土の3分の1以上を占め、世界自然遺産「やんばるの森」を有する。この地が、いま大きく動き始めている。

新産業の創出には、エリアの「顔」となる元気な企業が必要だ。北部には、いま二つの大きなプレーヤーがいる。

一つは、オリオンビール。沖縄を代表するビールメーカーで、2025年9月に東証プライムへの新規上場を果たした。成長投資が可能になったオリオンビールは、北部への投資を加速。これがエリア全体の底上げにつながると見ている。

もう一つは、大型テーマパーク「ジャングリア」。2025年7月に開業し、北部の雇用・経済に明らかなインパクトをもたらしている。約700億円を投じてテーマパークで勝負するジャパンエンターテイメントの胆力は、ただものではない。

また、名護市が「経済金融活性化特別地区」である点も大きい。具体的には、法人所得の最大40%の所得控除、投資税額控除、地方税の課税免除、エンジェル税制の緩和など、創業者にとって破壊的ともいえる優遇が重なっている。

エリアを問わない事業であれば、名護で創業したほうがいい——私はそう断言できる。

「日本の特異点」へ。nagonovaを核にした「創業の聖地」構想

琉球アルファドライブは2024年7月、名護市にあるコミュニティスペースを事業承継し、「nagonova(ナゴノバ)」としてリニューアルした。「創業の聖地構築事業」と銘打ち、「10年で1,000社の創業クラスターを沖縄北部につくる」ことを掲げ、創業相談から、税制優遇情報の提供、地域ネットワークの紹介、アクセラレーション支援まで、創業から海外展開までを一気通貫でサポートしている。2026年1月時点でnagonovaには16社が入居し、AI・交通・観光・デリバリー・防災・ITクラウドなど多様な分野の起業家が集まっている。

masaki komatsu

このように、今の沖縄北部には、新産業が勃興する条件が揃っている。1,000社の創業クラスターが実現すれば、ここは日本の特異点になり、日本全体を元気にする「へそ」になると、私は確信している。

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