
条件の「すごさ」を競う採用から、独自の「らしさ」が響き合う採用へ。 2025年10月、京都に全国から約1,300名の人事 ・ 経営者 ・ CHROが集結しました。「採用ウルトラキャンプ(以下、ウルキャン)」と名付けられたこのイベントは大きな熱狂を生み出し、日本最大級の採用をテーマにしたビジネスカンファレンスとなりました。第2回となる2026年は、京都・福岡での2拠点開催が決定しています。 このイベントを主催するのは、東京を拠点に採用支援サービスを展開するワンキャリアです。 本記事では、イベントの企画を担うワンキャリア・寺口浩大氏のインタビューを通じて、ウルキャンが目指す「地域の採用文化」の未来を紐解きます。

寺口 浩大
兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。三井住友銀行、デロイトトーマツグループを経て、現在ワンキャリアでEvangelistとして活動。専門はPublic Relations。採用をテーマにした大型ビジネスカンファレンス「採用ウルトラキャンプ」のコンテンツ企画をリードする。
100%採用に振り切る。知の融合から生まれる新しい視点
──これまでの人事系イベントとの決定的な違い、特にプログラムへのこだわりを教えてください。
テーマを「採用に関するもの」に特化しています。35テーマの講演内容は、記事やYouTubeで検索すれば出てくるような話ではなく、オフラインだからこそ共有できる話をメインにしました。
また、あえてマーケティングなど異分野の専門家を招き、他領域の知見を採用に落とし込む。他社や他領域との知の融合から生まれる新しい視点と熱を「キャンプ」のような非日常な空間で得られるということが、ウルキャンの価値であると考えています。
その地域ならではの物語が、疲弊した採用現場を再生する
──なぜ東京以外での開催にこだわったのでしょうか。
かつて出張先で採用を担う方たちの集まりに参加した際、東京との「情報やつながりの格差」に驚きました。最新のマーケット動向やメディア・テクノロジーの活用方法を知れば解決できる課題に、多くの担当者が独りで悩み、疲弊している。
これは良質な情報に触れ、仲間とつながる「機会」のなさが根本的な原因であると確信したんです。
だからこそ、東京以外での開催は不可欠でした。実際、第1回開催では地元の方はもちろん全国から約1,300人が集まり、東京からも約500人が京都へ駆けつけました。
普段話すことのない様々な地域、規模、フェーズの企業人事が交わり合い、学び合うきっかけを作れたことは大きな手応えとなりました。

──なぜ初回の開催地に京都を選んだのでしょうか。
採用現場に「らしさ」を伝えることの大切さを取り戻すためです。東京は規模や年収、成長率など定量的な「すごさ」が重視される街。一方京都は、物語や歴史といった「らしさ」を重んじる街です。
最近の採用動向を見ていると、給与条件など「すごさ」の張り合いに終始しており、多くの企業が疲弊しています。個人がこれほどまでに「らしさ」を求める時代に、企業人事もなぜその企業で働くのか、なぜその企業があるのかなど「らしさ」が宿る物語を思い出す場所として、京都での初回開催は最適でした。
──京都市とのコラボレーションも大きな話題を呼びました。自治体が 「採用」に関わる意義をどう捉えていますか。
京都市は、約15万人の学生が学ぶ「大学のまち・学生のまち」です。多くの若者が人生の岐路に立ち、自らのキャリアに向き合うこの場所に、全国から採用のプロが集まり、学び、繋がる機会をつくる。その結果、京都市から後援という形で後押しいただくこともできました。
地方の人口流出を解決するには、地場企業の採用力の向上が必須です。
第1回開催では、京都の地場企業であるアナテック・ヤナコの桺本頌大さんに「歴史ある企業だからできる仲間集め」について講演いただきました。他セッションでも予算・人・知名度が不足する地方での成功事例を共有することで、地場企業の可能性を提示できたと感じています。

仕事選びをもっとポジティブにするために、地域独自の採用文化を。
──地方における「採用文化」の構築が、地域経済にどのようなインパクトを与えると考えていますか。
各地域には独自の文化や、そこで暮らし、働く魅力が必ずあります。しかし、すべての地域の企業が「すごさ」という定量面で戦おうとする限り、どうしても東京一極集中の構造は変わりません。
その地域ならではの「勝ち筋」を見つけることで、「地元にいい働く場がないから出なければ」という消去法ではなく、「ここで暮らし、こう働きたい」とポジティブに働く場所や企業を選択できる世界線を作りたい。
そのために、その土地の人たちと地域独自の採用文化を育てていきたいです。
──2026年は福岡での開催も予定しています。「採用ウルトラキャンプ」はどのような進化をしていく想定ですか?
福岡もまた、独自の個性とエネルギーが集まる街です。九州に通う中で人情や仲間を大切にする文化に触れ、自分自身も大ファンになりました。今年は、さらなる規模拡大とコンテンツの進化を図り、「採用をひらこう、そして超えよう。」というコンセプトを実現すべく準備を進めています。
今や「自分たちの仲間は、自分たち全員で集める」、全員採用の時代。経営者や事業責任者、拠点長など、採用を自分ごとと捉えるすべての方に集まってほしいですね。

Ambitions REGION VOL.1
「次世代地域創世マガジン」
ビジネスマガジン・Ambitionsから、地域経済にフォーカスする新マガジンが誕生。 全国各地、産業振興の最前線を取材し、現場の「熱」を届け、「構造」を可視化します。 地域ビジネスは、地方自治体の公務員です。巻頭企画では、縦横無尽に越境する「すごい公務員」40名を一挙に紹介します。 特集は「地方“共”創生」。福岡、静岡、京都、岡山、大阪など、官民連携のさまざまな事例を取材。産業振興の設計に役立つ「型」にまとめました。 この他、安宅和人氏のロングインタビュー。 仕事に悩める公務員たちの覆面座談会。 アトツギ経営者のリアルに迫る特別企画。 地方自治体職員、地域の産業振興に携わるイノベーターのための一冊です。