【カプセルジャパン埴渕修世】日本IPを世界へ。グッズ販売や広告マーケティングでグローバルトップへ

田村朋美

飛躍するスタートアップに共通することはなんだろうか? 福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」事務局長の池田貴信氏は、重要なポイントとして「人」を挙げる。 シリーズ「飛躍するスタートアップ」では、福岡に生まれ、飛躍するスタートアップのファウンダー、その「人」に迫る。 第○回は、日本と台湾、韓国を拠点に日本IPの海外展開を支援するカプセルジャパン株式会社の埴渕修世氏だ。コンテンツのグッズ販売や広告マーケティングでグローバルトップを目指す埴渕氏に、創業の思いや現在の事業について話を伺った。

High Growth Program

Fukuoka Growth Networkに加入するスタートアップのなかから、さらなる成長が見込まれるスタートアップを選抜し、定期的なコミュニケーションを通じて、必要な支援内容をカスタマイズして提供する選抜型プログラムだ。

2025年度High Growth Program採択企業

BoutiqueResidence&Co.株式会社 OYASAI株式会社 コースタルリンク株式会社 BeeInventor株式会社 KYEs株式会社 株式会社トイポ 株式会社OneAI カプセルジャパン株式会社

埴渕修世

カプセルジャパン株式会社 CEO

愛知教育大学卒業。大学時代にロンドンと上海交通大学に留学。2008年株式会社アドウェイズに入社、2009年に渡中し、アドウェイズにて日本・ヨーロッパ企業の中国でのマーケティングに従事。2012年、アドウェイズが台湾の企業を買収後、取締役として同社およびスマートフォン関連事業の経営を開始。2013年にCAPSULEを設立、現在に至る。

「戦争をやめませんか」と世界に言える存在になるために

世界中で数多のファンを持つ、日本のアニメやゲーム、キャラクターなどのコンテンツ産業。世界の知的財産(IP)ビジネスは2025年時点で約54兆円と急成長を続けており、日本政府もコンテンツ産業を基幹産業へ成長させるべく投資を拡充している。

また、アニメやゲームのみならず、アーティストやブランド、アイドルなど多様なIPを活用したマーケティングも急速に広がっており、質の高いIPを保有する日本にとってビジネスチャンスの多い領域と言える。

そんなコンテンツ領域でのビジネスを展開しているのが、カプセルジャパンの埴渕氏だ。2013年に縁もゆかりもない福岡で創業し、1年後には台湾へ拠点を移して事業を拡大させ、2023年に再び本社を福岡に移している。福岡を創業の地に選んだのは、2012年に福岡市の高島宗一郎市長が「スタートアップ都市ふくおか」宣言をしたことにある。

「これまで、東京や上海、香港、台湾で働いた経験があったので、それ以外の知らない場所で新しいチャレンジをしたいと考えていました。だから、高島市長がスタートアップ都市宣言をしたときは、ここしかないと思いましたね」

埴渕氏の起業理由はコンテンツに対する課題感からではなかった。会社を100兆円規模まで成長させることで“世界平和”に貢献したいという思いがあったからだという。

「イギリスに留学していた頃、アメリカとイラクが戦争をしていました。イラク人のルームメイトから毎日泣きながら「ロンドンのどこで自爆テロをしたら戦争が終わるのか」と相談をされていたのですが、僕は話を聞く以外に何もできなかった。だから、将来は“戦争をやめませんか”と世界に言える存在になりたいと思い、30歳までの起業を目指しました」

クリエイターやインフルエンサーの不遇な状況を刷新

カプセルジャパンが展開しているのは、日本と台湾、韓国を拠点に日本IPの海外展開を支援する事業だ。海外現地メンバーや自社ネットワーク内のインフルエンサーと連携し、プロモーションからコラボカフェ・イベント企画、グッズ販売、広告など、コンテンツと消費者との接点を一気通貫で創出している。

「実は創業時、Facebookのようなグローバルメディアを作ろうと考えていました。その過程でゲームの攻略サイトを台湾で展開することになり、台湾のYouTuberを起用してプロモーションしたことがきっかけで、インフルエンサーは適切な報酬をもらえていないという現実を知ることになりました。影響力はあるものの、ビジネスモデルとして成り立っていない。僕らのやるべきことはメディア作りではなく、コンテンツやインフルエンサーを支援することだと考えるようになり、2014年から台湾で現在の事業を拡大させました」

2020年になると台湾以外での展開を見据え、日本や韓国、アメリカでのビジネスをスタート。その後、日本での上場を目標に定め、2023年に本社を福岡に移すことになる。現在は福岡で上場に向けた準備を進めつつ、海外でコンテンツを広めたい日本企業を開拓している。

「帰国して東京ではなく福岡に拠点を置いたのは、東京でグローバルビジネスに挑戦するスタートアップは星の数ほどあるけれど、福岡ならオンリーワンになれる可能性が高いからです。加えて、海外と関わる仕事をしたいけれど福岡から出たくないという人には就職の選択肢にもなるはず。福岡本社はそういう拠点として規模拡大を目指したいと考えています」

VTuberと台湾ウイスキーのコラボにより、川端商店街に活気を創出

福岡に拠点を置いて約2年。外国人観光客の集客を目的とした企業からの依頼が増えている。たとえば、福岡タワーやハウステンボスのインバウンドプロモーションが挙げられる。

「福岡タワーでは、台湾で人気の日本人YouTuberを起用して、子どもと一緒に福岡タワーで遊んでもらい、その動画を配信することで台湾の方たちにアピールしました。外国人観光客は当事者間で日本の観光スポットを共有しているから、どうしても一極集中しがちです。でも日本人の視点で日本を見ると、もっと良いところはたくさんあります。そういうことを伝えていきたいですし、日本の観光業に我々が貢献できる余地は非常に大きいと捉えています」

他にも、台湾を代表するウイスキーブランド「カバラン・ウイスキー」と、hololive productionのVTuber「儒烏風亭らでん」がコラボしたイベントの企画も実施。VTuberがライブストリームでウイスキーを紹介し、期間限定で川端商店街の複数店舗で限定セットメニューを提供した。

「このイベントはとても好評で、対象店舗の予約が殺到し、カバラン・ウイスキーの販売にも貢献できました。今後もこういったプロモーション活動をすることで、クライアントもクリエイターも幸せになる世界を作りたいです」

グッズ販売や広告マーケティング支援で世界トップへ

ここ数年で世界のアニメ市場は日本のアニメ市場を上回り、成長率も金額も海外が成長を牽引する形となっている。その海外市場の中で一番ボリュームのあるカテゴリが商品展開と広告マーケティング。まさにカプセルジャパンが得意とする領域だ。

「我々はコンテンツビジネスのバリューチェーンにおいて川下の領域、つまり海外の人に動画を届ける、グッズを届けるといったことに注力してきました。実は、グローバルでクロスボーダーにグッズ販売や広告マーケティングを支援するプレイヤーはまだ多くないんです。映像配信の市場ならNetflixがあるように、カプセルジャパンはグッズ販売や広告マーケティングの領域でグローバルトップを取りたいと考えています」

グローバル展開を加速させるために、直近では北米およびドイツにも拠点を置く予定だと埴渕氏は語る。そのためにも福岡を拠点に海外ビジネスやコンテンツビジネスに関わりたい人を100人集め、海外出張や海外勤務に挑戦できる組織を作りたいという。

「北米はバンクーバー、ドイツはデュッセルドルフにオフィスを作る予定がありますが、現地採用はあまり考えていません。それよりも、台湾や日本、韓国のメンバーに挑戦してもらいたい。一人ひとりの想いやタイミングによって、グローバル各国の拠点に移動できるような組織にしたいです」

機会に恵まれない若者をサポートし、幸せに生きられる世界を目指して

世界平和を目指して順調に会社と事業を拡大させている埴渕氏。どれくらいの規模になれば自身の野心を果たしたと言えるのだろうか。

「僕が社長としてバリューを発揮できるのは、あと10数年だと思うので、それまでに会社の売上規模を1000億円にしたいと考えています。そのときに、やる気はあるけれど機会に恵まれていない世界中の若者たちをサポートできる会社になっていたら、世界平和に一歩近づくのではないか、と。若者が機会を手に入れて貧困の差が薄まり、幸せに生きていけるような道をつくれたら本望です。その第一歩として、台湾と福岡の学生の交換留学を始めたいと考えています」

1000億円規模となると事業は多角化するケースが多いが、世界を見ている埴渕氏は多角化を考えていないという。

「日本国内だけを見ていたら多角化しないと難しいと思いますが、コンテンツマーケティングとコンテンツコマースをクロスボーダーで考えると、台湾、韓国、北米でしっかりとシェアを取っていけば、今の事業で1000億円は見えると思っています。コンテンツやクリエイターのマネタイズに貢献することが会社の存在意義なので、そこを極めたいと考えています」

そんな埴渕氏の活動に欠かせないアイテムは、スマートリング「Ouraリング」だ。これで睡眠と体調のスコアを常にチェックし、出張時も必ず充電器とともに所持しているという。

「職務を遂行するために健康管理は義務だと思っているので、体調スコアが低くなれば睡眠時間を増やしています」

国内外を飛び回る埴渕氏に健康管理は欠かせない。今後もコンテンツホルダー企業との協業を推進しながら、世界平和を目指していく。

#新規事業#働き方

最新号

Ambitions FUKUOKA Vol.3

発売

NEW BUSINESS, NEW FUKUOKA!

福岡経済の今にフォーカスするビジネスマガジン『Ambitons FUKUOKA』第3弾。天神ビッグバンをはじめとする大規模な都市開発が、いよいよその全貌を見せ始めた2025年、福岡のビジネスシーンは社会実装の時代へと突入しています。特集では、新しい福岡ビジネスの顔となる、新時代のリーダーたち50名超のインタビューを掲載。 その他、ロバート秋山竜次、高島宗一郎 福岡市長、エッセイスト平野紗季子ら、ビジネス「以外」のイノベーターから学ぶブレイクスルーのヒント。西鉄グループの100年先を見据える都市開発&経営ビジョン。アジアへ活路を見出す地場企業の戦略。福岡を訪れた人なら一度は目にしたことのあるユニークな企業広告の裏側。 多様な切り口で2025年の福岡経済を掘り下げます。