【安藤寿康】「仕事ができる」のは遺伝?仕事に向いていないと感じたときの処方箋(前編)

Ambitions編集部

「自分は仕事ができる人間だ」「仕事をしやすい環境や人間に恵まれている」。胸を張ってそう言える人はどれほどいるだろうか。「努力しているのに有能な同僚に追いつけない」「上司に不満だらけ」と、ネガティブな感情に振り回されている人も少なくないだろう。 仕事の能力や周囲の環境の捉え方は、人生の針路を大きく変えるファクターだが、それらは遺伝と無縁ではない。遺伝は人間の思考や行動、あらゆるものに影響すると言われ、仕事のパフォーマンスや、人間関係の築き方にも関係することは想像に難くないだろう。 だとすれば、努力は無意味で「仕事ができないこと」や「嫌な上司」を受け入れ絶望するしかないのだろうか。そもそも、遺伝はどこまで仕事に影響するのか。 「人生はすべてガチャ。それは生物学的必然」と断言する、行動遺伝学の研究者で慶應義塾大学の安藤寿康名誉教授に、仕事や職場環境に遺伝が及ぼす影響について聞いた。 本記事はAlphaDriveが運営する「POT Magazine」掲載記事の転載です。

安藤寿康

慶應義塾大学名誉教授

1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。同大学文学部教授を経て、2023年4月より慶應義塾大学名誉教授。教育学博士。専門は行動遺伝学、教育心理学。主に双生児法による研究により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティに及ぼす研究を行っている。著書に『遺伝子の不都合な真実』(ちくま新書)、『生まれが9割の世界をどう生きるか 遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋 』(SB新書)など。

平尾譲二

AlphaDrive専門役員 / POT Institute研究所長

東京工業大学工学部建築学科卒業。株式会社リクルートに入社し、じゃらんnetの集客戦略全般を担当して全社イノベーション賞を受賞。2011年に社内新規事業制度「NewRING(現Ring)」でグランプリを受賞。新規事業開発プログラム「Recruit Ventures」を立ち上げ、事務局長兼インキュベーションマネジャーとして風土醸成・案件募集から事業育成・人材育成までを統括。2018年8月、株式会社アルファドライブ取締役に就任。

小谷奉美

株式会社Seize The Day 代表取締役 / POT Institute 主席研究員

コロラド大学デンバー校ビジネス学部金融学科卒。インテル株式会社にて、社長長補佐官として、役員と共に経営戦略や事業の方向性、コミュニケーション戦略を策定。その後日本マイクロソフト株式会社に転じ、アドバタイジング&オンライン統括本部 シニアマーケティングマネージャを担う。2016年に株式会社Seize The Dayを立ち上げ、エグゼクティブコーチ・組織開発コーチ・リーダーシップトレーナーとして、世界の多国籍企業の経営トップや役員などのマインドセット変革、リーダー育成を行っている。2021年5月より株式会社アルファドライブに参画。

仕事ができる、できないは遺伝だけで決まらない

平尾 人は遺伝によって、どんな能力が秀で、どんな能力が劣っているかがある程度決まっているのではないかと思います。仕事の出来、不出来についても、遺伝の影響が大きいのでしょうか?

安藤氏 遺伝の要素はありますが、そもそも遺伝的に100%向いていると言い切れる仕事はありません。ひとつの仕事をするにしても無数の資質やスキルを組み合わせて取り組むことが多く、生まれつき持っている資質やスキルが完全に合致するケースはあり得ないからです。それゆえに「今の仕事に向いていない」と感じる人が多くいるわけですが、学習をしていくことで、仕事に合わせて自分の能力を伸ばしていくことは可能だと考えています。

続きは「POT Magazine」にてご覧ください。

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