自己肯定感爆アガリ↑↑ 組織を活性化させるギャルビーイングの伝道師

Ambitions編集部

日本の大企業には「無駄な会議」が多いと言われる。例えば「発言者がいつも同じで、議論に広がりが生まれない」「若い人が自由に提案したり、発言できる雰囲気がない」など、会議が本質的に機能していないケースもあるだろう。その根底には「自分の発言で場を乱したくない」「できないやつだと思われたくない」といった、様々な思惑や忖度が入り混じっている。 そんな硬直化・マンネリ化した会議に新たな刺激を与えるのが「ギャル式ブレスト」だ。大企業の堅い会議にギャルが参加し、忖度のない自由な発言でブレストを活性化させていく。結果、参加者にはギャルマインドが植え付けられ、活発でポジティブなコミュニケーションだけでなく、組織文化の変革にもつながっていくという。 すでに多くの企業が実践するギャル式ブレストの効能と、ギャルマインドの重要性について、CGOドットコム代表のバブリー氏に伺った。

バブリー

CGOドットコム 総長

人生で3回学校を中退🎓。高校中退後は単身で大阪に住みギャルカルチャーに触れる。2020年度より「✨🌈ギャルマインド✨🌈あふれる世の中をつくる」ことを目指し「CGOドットコム」を立ち上げる。主力事業である「ギャル式ブレスト」は、10社以上の企業・団体への導入実績を持つ。自身もギャルマインド伝道師として、年間10件以上の講演を行っている。

ポジティブで褒め上手なギャルが組織を変革する

はじめに、そもそも「ギャルマインド」とはどのようなものなのか? バブリー氏の定義では、3つの要素で構成されるものだという。

「1つ目の『自分軸』は、社会や他人の価値観ではなく自分自身の好きを表現できること。2つ目の『直感性』は、自分が思ったことを率直に言葉にできること。そして、3つ目の『ポジティブ思考』は、物事を前へ前へと推進させていく底力になります。この3つは、多くのギャルが共通して持っているように感じますね」

バブリー氏は「ギャル式ブレスト」などを通じ、大企業のビジネスパーソンにそうしたギャルマインドを注入する活動を行っている。しかし、なぜ「ギャルの力」をビジネスの現場に活かそうと考えたのだろうか。

「私自身、高校生のときにギャルの子たちから生き方のヒントをもらったり、学ぶことがすごく多かったんです。それまでの私は優等生キャラで生きてきたのですが、彼女たちは世の中に忖度せず、自分に正直に生きている。当時の私にとってそれは驚きであり、救いでもありました。

大学生になって、ビジネスや社会課題の現場を学び、自分でも社会に対して事業をつくってみたいと考えたとき、頭に浮かんだのがギャルの子たちでした。私が感じた彼女たちの良さを、実際に体験できるようなサービスとして社会に実装したい。そのなかで、企業の忖度文化を変えられるのでは、という案が生まれたんです。

日本の大企業では上司に忖度し、周囲に気を遣い、それゆえコミュニケーションが停滞しているという話を耳にします。会議でも若い人が自分の意見やアイデアを積極的に発言できず、今ひとつ盛り上がらないと。一方で、ギャルは忖度しませんし、思ったことを臆せず発言するため、幅広い意見が求められるブレストの場などでは特に重宝されます。

また、ギャルはポジティブで褒め上手なことから、会議に参加する人たちの自己肯定感も上がる。堅い会議の場を明るく活性化させるだけでなく、チーム全体の士気を高め、組織すらも変革する力を持っているのがギャルマインドではないかと思います」

ギャル式ブレストの様子
ギャル式ブレストの様子

社員同士の壁をなくし、「脳内ビッグバン」を引き起こす

ギャル式ブレストには5つのルールが設けられている。「参加者の役職や肩書きを公開しない」「敬語禁止」「あだ名で呼び合う」「リアクション多め、5分以上の沈黙禁止、乗っかり大歓迎」「一番お気に入りの派手な服で参加」。これらは、参加者同士の壁をなくし、フラットに忌憚のない意見を交わし合うためのものだ。

「忖度や組織の事情をいったん排除し、『脳内ビッグバン』を起こしてもらうために、こうしたルールを設けています。最初は照れたり、上司をあだ名で呼ぶことを躊躇していた人たちも、会議に同席するギャルたちの自由な発言を聞いているうちに、徐々にギャルマインドに引きずり込まれていくんです。

結果、最初は顔がこわばりまくっていた社長さんが、最終的に誰よりも笑顔になっていたりして、めちゃくちゃ面白いですよ。そうやって参加者のギャルマインドを引き出すことで、より柔軟な発想、活発なコミュニケーションが生まれる土壌ができると考えています」

誰しもがギャルマインドを持っている

なお、ギャルマインドに性別や年齢、属性などは関係ないという。一見、ギャルとは程遠いように思える中高年の男性であっても「自分軸」「直感性」「ポジティブ思考」の3要素を意識することで、ギャルマインドを身につけることができるとバブリー氏は言う。

「ギャルマインドは、すべての人が心の中に持っているものです。例えば、子どもの頃って誰もが直感的に夢中になれるものを見つけ、時間を忘れて遊んでいたと思うんです。そんな、自分が好きなことを素直に表現する気持ちがギャルマインドの根幹です。

そして、大人になっていくにつれて様々な制約を受け、いつしか失われてしまったギャルマインドを再び引き出す。心の中にギャルを飼うことで、自分の思いや意見をハッキリと言葉にできるようになる。これが、ギャル式ブレストの最大の狙いですね」

ギャルが忖度したら日本は終わり

本来、自由な発言が歓迎されるはずのブレストの場でさえ忖度が横行し、大胆なアイデア、反対意見などが封殺されるようなチームは健全とは言えない。だが、そんな空気などお構いなしに、自分が思ったことを率直に言葉にするギャルの直感性は、変革を求めるチームや企業にこそ必要な要素だ。

「例えば、とある女性向けプロダクトの開発会議でギャル式ブレストをやりたいというオファーを受けたことがあります。すでにプロトタイプはできている段階で、実際に使ってもらってフィードバックが欲しいということでした。すると、ギャルの子たちはキッパリ『これ、私たちは絶対に使わない』と断言したんです」

まさに忖度ゼロ。これにはさすがのバブリー氏も肝を冷やしたというが、先方の反応は意外なものだった。

「もちろん、開発担当者の思いや信念を否定するような発言ではなく正直な感想を口にしてくれたのですが、私としてはヒヤヒヤしましたね。さすがに、先方を怒らせてしまったかなと(笑)。

でも、あとから担当者の方に話を聞くと『じつは私も、これでいいのか?と思っていたのですが、すでにプロジェクトが進み過ぎていてなかなか言い出すことができなかった。だからハッキリと言っていただきありがたかったです』と。

改めて、忖度や遠慮って怖いなと思いましたね。もちろん、私は総長としてオファーをいただいた企業の方に気を遣う部分はあるのですが、ギャルの子たちには自由にやってほしいと伝えています。ギャルが忖度し始めたら、日本は終わりですからね」

ギャル式ブレストの様子
ギャル式ブレストの様子

大企業の知見×ギャルマインド=最強

バブリー氏自身、ギャル式ブレストを通じて日本社会ならではの忖度文化や古い体質を感じる場面は多いという。そうした日本企業に見切りをつけ、早々に世界へと目を向ける若者もいる。今後、日本の企業は変わっていけるのだろうか?

「変わる余地は十分にあると思いますし、変わろうとしているのも感じます。最近、大企業の上役の方がよくおっしゃるのは『今は会社が人を選ぶのではなく、人が会社を選ぶ時代だ』ということです。

そして、若い人から選ばれる企業になるためには『この会社ならやりたいことが叶えられる』『自分らしく働ける』と思えるような環境を整えなくてはいけないと。少なくとも、ギャル式ブレストに興味を持ってくださる大企業の方々は、そうした課題感を持っていると感じます」

もともと大企業には技術も、その他のリソースも潤沢にある。そこにギャルマインドが加わって社員の力が十二分に活かされる組織になれば、これまでにない革新的なサービスやイノベーションが生まれるかもしれない。

「以前、知人から『昔はアイデアが先行し、技術が不足していた。でも、今は逆に技術はあるけどアイデアが追いついていない』という話を聞き、とても納得しました。実際、多くの企業もそこに危機感を抱いているようです。もっと社内から、突拍子もないようなアイデアが次々と飛び出す組織にしていかなければ、スタートアップや海外の企業には勝てないと。

おそらく、社内にはすでに熱い思いやアイデア、驚くような知見を持った人がいるはずなんです。そこに、うちらのギャルマインドが合わさったら最強だと思いませんか? 大企業のエラい人たちのなかにはギャルを怖いと思っている人もいると思うんですけど、全くそんなことありません。むしろ『一緒に拳を突き合わせてやっていきましょうよ!』って言いたいですね」

【組織の着火法】

一人ひとりの思いや個性を最大限にリスペクトしつつ、ギャルマインドで忖度なくポジティブにコミュニケーションする!

(2023年1月20日発売の『Ambitions Vol.02』より転載)

text by Noriyuki Enami / photographs by Takuya Sogawa / edit by Kohei Sasaki

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