NTTドコモ発。遊ぶほど楽しくなるプログラミング教育サービス【日本新規事業大賞#03】

Ambitions編集部

スタートアップ産業が活発化し、新たなビジネスが続々と生まれている日本。しかし、イノベーションを創出するのは、スタートアップだけではない。歴史ある大企業・中小企業からも、革新的なアイデアと起業家精神を備え、社会課題を解決する挑戦者たちが活躍している。 未来を変える可能性を秘める彼らの活動と、優れた新規事業にスポットライトをあてるのが、「日本新規事業大賞」だ。 2024年5月15日、スタートアップ業界の展示イベント「Startup JAPAN」の中で、「日本新規事業大賞」のピッチコンテストが開催された。本シリーズでは最終審査に勝ち残った5つの企業内新規事業を、連載形式で紹介する。 第3弾は、NTTドコモの新規事業から生まれた「embot (エムボット)」。ダンボールと電子工作パーツを用いてロボットを組み立てるプログラミング教育サービスである。2021年8月にNTTドコモからスピンアウトして誕生した、株式会社e-Craft 額田一利CEOのピッチを紹介する。

無限に広がる選択肢の中から、自分だけのロボットをつくる

小中学校での必修化とともに、民間でもさまざまなサービスが展開されるプログラミング教育。子どもの興味を引くアイデアが模索される中、NTTドコモ時代に額田氏が打ち出したのが、“遊ぶほど楽しくなる”教育サービスだ。

「embot」は、ものづくりを通じてプログラミングを学ぶことができる点に特徴がある。商品の基本セットは段ボールのロボットパーツ、電子工作キット、プログラミングアプリで構成。段ボールのパーツはハサミを使わずに組み立てられる仕様になっており、モーターやライト、スピーカーなどと組み合わせることでロボットが完成する。専用アプリでプログラミングを行うと、ロボットが動作する仕組みだ。

また、プログラミングの方法にも工夫が見られる。従来のようにコードを書く必要はなく、タブレットの専用アプリ上に表示されたブロック(ロボットの動作に対応したプログラム)を指で選び、配置するだけという、直感的な操作が可能だ。

例えばロボットの腕を左右に振りたい場合は、腕の角度を設定する複数のブロックを選択・配列すると、ロボットが指示通りに動いてくれる。ユーザーである子どもたちは自らの手で工作物を動かすことで、プログラミングの本質を理解していく。

提供:e-Craft

「子どもたちは自由な発想でロボットを組み立て、動かすことができます。アルファベットの文字列を入力することなくプログラミングができるようにしたのは、楽しさやひらめきを大切にしたいからでした」

「従来のプログラミング教育は、ロボットのような楽しいフェーズに行き着くまでに、煩雑なステップが必要だった」と語る額田氏。“つくりたいものをいきなりつくれる”ことが、簡易なインターフェースに特化した「embot」の提供価値なのだ。

モノ売りからコト売りへ。子ども以外のユーザーにもターゲットを拡大

NTTドコモでエンジニアをしていた額田氏は、休日の趣味として仲間たちと「embot」の開発をスタート。額田自身が活用してきたという「デザイン思考」の手法を応用し、「つくる力」と「考える力」を楽しみながら身につけることを目指したという。

開発後は社員でありながらNTTドコモとライセンス契約を締結。さらにタカラトミーとの連携によって開発・製造品質の改良を行い、1年間で総出荷台数3万5000台を突破した。

ドコモグループでは新規事業の創出を促進するため、社内ベンチャー制度を設置している。額田氏は2021年に同制度を利用し、NTTドコモから出資を受ける形で株式会社e-Craftを設立した。

額田氏が掲げるビジョンは「創造的ものづくりを誰もが実践できる社会」。AIやロボットなどが普及し、プログラミングが当たり前になる時代に向けて、子どもたちの非認知能力を伸ばすためのプラットフォームとなることを目指しているという。

現在、「embot」は家庭で遊ぶ商品としてだけでなく、約150の小学校の授業で使われている。また、全国のドコモショップでは「embot」を使ったプログラミング教室が開催されており、地域に教育の場を提供している。今後は高校、大学、社会人へとユーザーを広げる方針だ。

「新商品『embot+』はiFデザイン賞、キッズデザイン賞を受賞するなど、社会的な評価も高まっていると感じます。現在、ユーザーである子ども同士が評価をし合う展覧会を実施していますが、イベントや社会人研修など、モノ売りにとどまらないサービスにも取り組みながら、C2Cプラットフォームを構築するイメージで、事業を広げていきたいです」

「子ども向けサービスを大人が提供すること自体に疑問を持つ」という額田氏は、「子ども自身がプログラミング教育サービスを開発する世界を目指したい」と語る

審査員との質疑応答

Q:B2C、B2Bの幅広いユーザーに利用されている点が伝わりました。ユーザー一人当たりの単価を上げていく工夫があれば教えてください。

A:センサーなどオプション品を用意したり、API連携をサブスクリプションにしたりと、付加的なサービスを提供しています。

Q:素晴らしいサービスで、さっそく自分の子どものために購入しました。最終的にどの程度の売上規模を目指しているのでしょうか。

A:まずは二桁億規模を確実に目指します。イベントの開催などコト売りも収益基盤にすることで、長期的に三桁億規模に到達したいです。

text by Yuta Aizawa / photographs by kota Nunokawa / edit by Yoko Sueyoshi

#イノベーション#新規事業

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