【リコー発】廃棄物処理場の火災を防ぐ、AIによる廃棄物の自動分別「Raptor VISION」

Ambitions編集部

──日本をアップデートするのは、スタートアップだけじゃない。 スタートアップシーンが活況な中、特に2020年代から盛り上がりを見せているのが、企業内の「新規事業」だ。伝統的な日本企業の中から事業が続々と生まれ、自社のアセットを最大限に活用し、一気に社会実装を進める。そんなダイナミックな変革が起きつつあるのだ。 新規事業と社内起業家(イントラプレナー)を表彰するために誕生したイベントが、「日本新規事業大賞」だ。2025年5月8日「Startup JAPAN」の中で開催された第二回イベント最終審査7事業のピッチの模様を、集中連載で届ける。 シリーズ第四弾は、廃棄物処理場の火災という想像以上に大きな社会課題に果敢に挑むリコーグループの田畑登氏のピッチを紹介する。卓越した技術力で多くの人を救う事業は、未来の廃棄物分別の世界を見せてくれた。

知られていない廃棄物処理場の火災という大問題

公表されているだけでも、1時間に1回、年間で1万件以上も発生している「廃棄物処理場の火災」。火災が甚大化すると、廃棄物処理業者が事業を継続できなくなるのはもちろん、ゴミの受け入れができなくなるため、周辺地域に甚大な影響を与えることも少なくない。

廃棄物処理場の火災は年々増加しており、グローバルな課題にまでなっている。廃棄物処理の現場では、「いつ火災が起こるかわからず、気が休まらない」「火災事故が起こると、自治体、地域住民への報告だけでなく、復旧までに業務が停止することにより、売上が激減するなど大きな事業影響が出ている」などの声であふれている。

火災の原因の1つが、リチウムイオン電池だ。リチウムイオン電池は、モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンなどに内蔵され、大容量の電力を蓄え、繰り返し充電できる優れた特徴を持つ。その一方で、内部に可燃性の電解液があることなどから、発火リスクが高いともいわれている。

なぜ、リチウムイオン電池を誤って廃棄するのか。現地視察やヒアリングを重ねたところ「リチウムイオン電池内蔵製品が多様化していること」や、「外観からは、リチウムイオン電池が入っているか判断できないこと」に原因があることがわかってきた。廃棄物処理場にはこうした現状があり、もはや人手によるリチウムイオン電池の除去は限界にきているのだ。

そこで田畑氏が着手したのが、廃棄物分別特化AIエンジン「Raptor VISION」の開発だ。

リコー

「スキャナーのグローバルシェアNo.1であるリコーグループの光学技術や画像認識技術で実現した『Raptor VISION』は、X線画像と画像認識AIを組み合わせ、透過画像からリチウムイオン電池を検知するシステムです。

イメージは空港の手荷物検査。中身を取り出すことなく、AIがリチウムイオンを発見し、その位置をプロジェクションマッピングやモニターで通知させます。『Raptor VISION』で廃棄物をチェックすることで、リチウムイオン電池を確実に除去し、火災のリスクを低減できるのです」

リコー

“サステナブルな世界の実現”に間違いなく貢献する「Raptor VISION」

現在、「Raptor VISION」は、廃棄物処理の現場で実証実験を繰り返しており、製品化まであと一歩というレベルの精度(認識率96%)を達成している。さまざまなステークホルダーからは技術的な優位性や導入後の運用性、保守性を評価され、大きな期待を集めている。

今後、「Raptor VISION」は、クライアントに届く最終的な製品を開発するデバイスメーカーや、廃棄物処理に関わる商社などと協力し、市場への素早いリーチを目指す。

「 “AIによる自動選別の市場”を立ち上げ、本日ご紹介した危険物検知、さらには産業廃棄物領域まで適用範囲を広げることで、事業をステージさせていきます。そして、“廃棄物が当たり前のように資源にかわる”、そんなサステナブルな世界を創っていきたいと考えています」

審査員との質疑応答

Q:現状、自治体などのエンドユーザーは、火災防止にどの程度のコストをかけているのでしょうか? また、最終的な利益はどのように想定していますか?

A:廃棄物処理場では、現状、人手による事前チェックを強化されており、5名くらいの担当者がゴミ袋を開け、人間の目でチェックしているので、1人年間400万円くらいと考えると、コストは2,000万ぐらいかかっていると考えています。当然、火災が発生すると被害額は何十億です。今後、ビジネスの規模としては、百億円規模にまで拡がると考えています。

Q:製品化にあたり、デバイスメーカーや商社との連携というお話がありましたが、現在、どのように進んでいるのか教えていただけますか?

A:2024年にAIで瓶を自動選別する製品をローンチした際、プラントメーカー様やデバイスメーカー様と一緒に導入向けたスキーム作りを行ってきました。あとは、継続して認識精度を高めていくとともに、施設に後付で導入ができたり、サブスクリプション提供で初期導入を抑えたりするなど、多くの現場で選別作業の自動化が進めるような製品化を目指していきたい。

#新規事業

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