ソフトバンクの新たな挑戦。メディアを超えるオウンドメディアへ

Presented by NewsPicks for Business

Ambitions編集部

かつて企業は、記者発表や取材対応を行い、新聞やテレビといったマスメディアがそれを取り上げることで、ステークホルダーや生活者にメッセージを届けていた。しかし、長年マスメディアに依存していた情報発信の構造が壊れ、インターネット上ですべてのコンテンツがフラットになるなかで、企業が自ら情報発信することが求められるようになった。 さらに、日本国内でも急速にSDGsやESG投資への関心が高まったことで、より本質的な経営からのメッセージを社内外に発信し、ブランディングや認知拡大・採用強化などに取り組む必要に迫られている。 そんななか、ソフトバンクがNewsPicks for Businessと新たなオウンドメディアでの情報発信「X(クロス) PROJECT」に挑戦している。「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」のトリプルメディアを活用したマーケティング手法が叫ばれて久しいが、企業が「オウンドメディア」でこそできることとは?  そして、メディアがオウンドメディアにできることとは──。

浅井宏士

ソフトバンク ブランド推進室 室長 

大学卒業後、前身の携帯電話事業会社へ入社。主にマーケティング、ブランド、コミュニケーションの分野で経験を重ね、2016年4月 ソフトバンク株式会社 コミュニケーション本部 広告宣伝統括部長に就任。以降、営業部門、サービス企画部門の統括部長職を経て、2020年4月から現在まで同社ブランド推進室 室長を務める。

渡辺康太郎

NewsPicks for Business メディアプロデュース事業部 ゼネラルマネージャー

2006年、現在のUnipos株式会社に立ち上げメンバーとして入社。2015年に自身が立ち上げた事業で、キュレーションメディアの広告事業立ち上げ支援も行う。東証マザーズ上場を経験。2020年9月から現職。AlphDrive/NewsPicksfor Businessで新規事業立ち上げを複数経験したのち、2023年4月より自身が発起人となってメディアプロデュース事業を開始し、推進している。

ソフトバンク株式会社ブランド推進室 室長の浅井宏士氏と、NewsPicks for Business メディアプロデュース事業部ゼネラルマネー ジャー・渡辺康太郎に聞いた。

商品訴求の広告だけでは「ファン」は増えない

浅井 VUCAの時代と言われるなかで、企業は社会課題に対する取り組みやスタンスをしっかり示し、存在意義を認められることが重要になってきていると感じます。

渡辺 企業がその存在意義やスタンスを発信する重要性が増していますね。

浅井 長くマーケティングや広告の仕事に携わってきたのですが、「おトク」「便利」「楽しい」だけでは、ブランドとして選ばれることが年々難しくなってきています。商品を売るための広告はもちろん大切ですが、それとは別に、自社に共感し応援してくれる「ファン」を増やすためのコミュニケーションの必要性が高まっています。

そこで「ソフトバンクファン」をどう増やすかと考え、伝えるべきテーマの軸を「社会課題解決に向けた取り組み」と定めました。ソフトバンクが通信会社の枠を超えて、デジタルの力で社会課題を解決する企業を目指していることを伝えたいと思ったのです。

渡辺 「携帯キャリア」「スマートフォン取 扱会社」からのパーセプションチェンジですね。

浅井 そうです。ソフトバンクは事業を通 じて社会課題を解決する取り組みを数多く行っており、第5回日経SDGs経営大賞で大賞を受賞したり、世界の代表的なESG指 数である「Dow Jones Sustainability Index(ダウ・ジョーンズ・サステナビリ ティ・インデックス)」の構成銘柄に2年連続で選定されたりと、外部の専門家から高く評価されています。

でも、それが一般の生 活者になかなか伝わっていない。そのギャップを埋めるため情報発信を強化することにしました。 ただ、自社の取り組みを伝えようとすると、往々にして「手前味噌なコンテンツ」「企業の自己満足」に陥りがちです。

そこで、退屈になりがちな経済情報をエンターテイン メントに昇華しているNewsPicksの編集ノ ウハウを借りたいと思いました。私自身、毎朝NewsPicksのプッシュ通知で今の世の中を知るという生活を送っていることもあり(笑)。

渡辺 光栄です。我々にとってもオウンドメディア支援は2023年4月に立ち上げた事業で、新たなチャレンジでした 。

NewsPicksなどのメディア運営で培った編集力やクリエイティビティを通じて、企業や団体がビジネスを推進していく上で必要となる発信力を強化することで、企業活動を通じた社会課題の解決や新たな価値創造に貢献していくものです。

インターネット上に様々なコンテンツがあふれる今、スマートフォンの閲覧時間の奪い合いになっています。ただ単に記事を作るだけでは、パーセプションチェンジを成功させることは難しい。信頼性があり、かつ面白いと感じるコンテンツでなければなりません。誰に何を伝えるべきか、どこがニュースバリューかを明確にした上で、ユーザーが普段の生活の中で興味を持つポイントと、どこまで掛け合わせて伝えられるかが勝負です。

社外だけでなく、 インターナルにも効くコンテンツを

浅井 今回NewsPicks for Businessと立ち上げた「X(クロス) PROJECT」では、深刻な社会課題に対し、テクノロジーの力で解決していく「物語」を伝えたいと考えました。

渡辺 フリーアナウンサーの大橋未歩さんと慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章さんをアサインし、ソフトバンクの担当社員の方とお話してもらいました。ご担当の方に、プロジェクトの経緯や現在地を語ってもらうとともに、お二方には時に専門家として、時に「いちソフトバンクユーザー」としての視点でお話しいただきました。  記事配信後、社内外から反響はありましたか?

浅井 記事を閲覧した読者への効果測定調査で、ポジティブな評価が得られました。また、社外だけでなく、社員のエンゲージメントを高めるインターナル施策としても有効でした。単体で1万9,000人もの従業員が働くソフトバンクの中で、自分の仕事が世の中に貢献しているという実感って、なかなか湧きづらいものです。「X(クロス) PROJECT」の記事を社内共有することで、隣の部署の取り組みを知るきっかけとなり、情報が集積していくことで、会社の目指している大きな方向がわかるようになります。

渡辺 いかに社内で新規事業や隣の部署の仕事について理解が得られているかは、今後企業を発展させる上でも肝になります。そこに「X(クロス) PROJECT」が貢献 できていることがうれしいです。社外向けにも、社内向けにも、今後ももっと伝わるコンテンツを作りたいですね。

社会に役立つ取り組みを、津々浦々、多様な人に伝えたい

浅井 ソフトバンクでは、社内のあちこちで様々な取り組みが行われていて、まだ社内外に知られていないトピックが山ほどあります。記事化したトピックでは、デジタルディバイド (情報格差)解消に向けて、高齢者向けに無償で実施しているスマホ教室 が2022年度までにのべ360万人にご利用いただいていることや、自動運転バスの運行を実現し、地方の運転手不足の課題の解決に取り組んでいることなどをお伝えしています。

渡辺 のべ360万人も利用されているスマホ教室は、その規模感だけでニュースですよね。取材では大橋さんも驚いていらっしゃいました。

浅井 高齢化が進む地方、特に過疎地域には本当に多くの社会課題があります。そこでの暮らしを少しでも豊かに、快適にするためにソフトバンクが様々な活動をしていることを、そこに住む方々にもぜひ知ってほしい。  

表現としては、記事を中心にしながら、 若者に向けてはSNSのショート動画などを活用して発信したり、地方在住の高齢者にはテレビを使った動画展開も今後は視野に入れたりするなど、様々な見せ方を組み合わせていくことでもっと多くの人に届くのではないかと考えています。

『X(クロス) PROJECT』トップページ(左)と、大橋未歩氏を起用した「スマホ教室」の記事(右)

渡辺 記事で最先端の取り組みをビジネスパーソンに伝えるだけでなく、より多くの人に伝わりやすい動画での発信にもチャレンジしていきましょう。

浅井 インターネットによって企業や個人が自ら情報を発信できるよう になり、相対的に既存メディアの力が弱まるなかで、オウンドメディアの重要性が高まると捉えています。企業ブランディングやファン形成においてオウンドメディアは最重要と考え、今後も発展させていきたいです。

渡辺 まさにメディアを超えていくオウンドメディアですね。オウンドメディアは今、これまでの「ブーム」とは少し違う、消費者やステークホルダー、社会とのより本質的なコミュニケーションを担うメディアになると考えています。 サイトにリリースを載せて満足するのではなく、きちんと「伝わる」コンテンツを作る。オウンドメディアのコンテンツを軸に、 マスメディアへの広告やSNS施策と掛け合わせることで、さらなる広がりを作っていくこともできます。グローバルではオウンドメディア機運は高まっていますが、日本国内ではまだまだこれから。NewsPicksの編集ノウハウや有識者のアサイン力、メディアが持つニュースセンスや第三者視点、伝わる表現力や演出力をご活用いただき、引き続きオウンドメディアの盛り上がりをサポートしていきたいです。

text by Megumi Miyabara / photographs by Madoka Shibazaki / edit by Aki Hayashi

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