日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社(以下IJDS)が全国7カ所に開設した新たな地域拠点「IBM地域DXセンター」が挑むプロジェクトと、地域におけるキャリア形成を追うシリーズ企画、第3回。 2023年5月に開設した広島市と、同年7月開設の高松市。中国・四国エリアの2拠点をリードする、土本光恵氏にインタビュー。さらに、各拠点で勤務するエンジニア2人のリアルな声を届ける。
リモートによる開発の拠点が、全国各地にITの風を起こす
土本光恵氏は、IJDSのオートモーティブ事業を統括する。広島市と高松市のIBM地域DXセンター立ち上げに携わり、東京から高松市へ転居してきた。
土本光恵氏
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 執行役員 オートモーティブ事業部長 IBM高松DXセンター センター長
土本 最初は広島DXセンターの立ち上げに携わり、並行して進む四国の拠点である高松DXセンターもリードすることになりました。現在は高松市在住です。
私自身、東京での生活が長かったのですが、出身は広島です。中国・四国地方はなじみのある地域ですので、スムーズに移り住むことができました。
IBM地域DXセンターは全国7カ所で展開していますが、基本的な方針は「リモートを中心とした開発・保守運用」です。地域にいながら全国のプロジェクトに参画していき、拠点があることでIT人材を雇用し、育て、地域貢献へとつなげていく。
現在は広島市・高松市ともに、地域の企業や行政との連携強化を図っているところです。
日本IBMが築いてきた信頼関係 広島市で目指す事業拡大
──実は、日本IBMと広島との関係は深い。広島に本社を置く自動車メーカーのシステム開発や、地方銀行のシステム構築・運用を長年にわたり担当してきた。
土本 広島エリアでは日本IBMグループのメンバーが数百名規模で、以前からプロジェクトに取り組んでいます。広島は国際的な知名度も高く、ビジネスの歴史もある。私たちにとって十分な基盤が整っているエリアです。
新たに立ち上げたIBM広島DXセンターでは、これまで主に自動車業界の支援を通して培ってきた知見を生かして、自動車・製造業などのプロジェクトを支援するなど、我々の広島エリアの強みを、もっと国内外に広げていきたいと考えています。
──IBM広島DXセンターに勤務するメンバーは、広島出身者や、学生時代を広島で暮らした人など、縁のある人が多い。縁のある広島へのUJターンや出身地が広島に近いという理由で入社を決断する人もいるという。愛着のある地元への貢献は、現役のIT人材にとって大きな魅力になるようだ。
さらに、広島拠点開設の効果は、社外にも及んでいる。
土本 IBM地域DXセンターを広島市に開設したことで、協力関係にある大都市圏の企業様が、一緒に広島に進出してくださる動きがありました。
私たち一社だけでなく、同じ思いを持つ企業様と連携を強化することで、業務を進めていきたいと思いますし、広島への貢献も行いやすくなると考えます。
ゼロからの高松拠点開設 離島暮らしのエンジニアも
──すでに地盤のある広島市とは異なり、ゼロからの立ち上げになったのが高松市の拠点だ。高松市の人口は約42万人でIBM地域DXセンターの他の拠点である広島市や北九州市などと比較するとコンパクトな街だ。
高松市は現在、産学民官連携で地域のDX「スマートシティたかまつ」の推進に取り組んでいるものの、IJDSが担ってきたような大規模開発の事例は少なく、IT人材が育ちやすいとはいえないエリアだった。
土本 これまでの実績がないなかでのスタートでしたが、香川県の方々の県民性なのか、行政や地元の企業さんに相談すると、とても親身になってくださるんですね。その点で、非常に助けていただきました。
また、教育機関の方やキャリア採用で入社してきたメンバーと話すなかで見えてきたのですが、県内にはITの大きな開発に取り組める環境が少なく、IT人材の転職先も多くない。仕事を求めて県外に行かざるを得ない若い人がいるとのことでした。
IBM高松DXセンターでは、基本的には県外の開発案件に取り組んでいますので、まずは高松市というエリアで雇用を創出し、地域におけるIT人材がさまざまな開発プロジェクトに携わり、成長できる場となることで貢献したいと考えています。
──手探り状態から立ち上がった高松拠点、いざIT人材の募集をはじめると、広島拠点とは異なる傾向が見られた。高松市の場合は、香川で暮らしたいという理由で移住したという応募者もおり、広島市ではほとんどなかったIターン者をはじめ、経歴やスキルも多彩だという。
土本 他のSIerに勤めていた方や、社内でSEをしていた方、海外で勤務していた方、しばらくITから遠ざかっていたけど、またチャレンジしたいという方など、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が集まっています。大規模開発に取り組めるというIJDSの業務内容はもちろんですが、瀬戸内の恵まれた住環境が、大きな魅力になっていると感じます。
普段は近くの離島で在宅勤務をしていて、必要な時にフェリーに乗って高松へと出社する、という働き方をしているメンバーもいますよ。
──自分らしく暮らせる環境を、自ら選ぶことができる。多種多様なIT人材、一人ひとりのキャリアに寄り添うことができるのが、全国に拠点を持つIBM地域DXセンターの特徴だといえるだろう。
土本 広島市も高松市も、拠点開設から1年にも未たないですが、本当にさまざまな人たちが集まってきてくれています。多彩なメンバーが刺激し合い、とても前向きな方向に進んでいることを肌で感じます。拠点の大きな目的である「IT人材が育つ環境」ができはじめていると、手応えを感じています。
【働き方インタビュー 広島】思いのあるプロジェクトには挙手を。先端技術と向き合い、キャリアを切り開く
──菅氏は、化学工学の領域でキャリアを積んだのち、20代後半でIBM広島DXセンター へ転職。前職の勤め先のある関西から、生まれ故郷の愛媛へ近いことから広島へ移住した。
菅氏
オートモーティブ事業部 アプリケーション・プログラマー
菅 転職で特に重視していたのは、リモートで働けるという点です。仕事はもちろんですが、家のことも大切にしたいですし、プライベートな時間も確保したい。理想のワークライフバランスが保てていると感じています。
IBM地域DXセンターに勤務して最も驚いたのは、社内のシステムやコンテンツの豊富さです。オンラインで自由に受けられる研修コースなどは、入社前に聞いて想像していたものの3~4倍。さすがグローバル企業のグループ、日本の企業では考えられないほどの量だと感じています。今現在も、「まだ知らない機能やコンテンツがあったのか!」と、日々驚いています。
──取り組む業務は、グローバルなものから地元・広島企業の支援まで多岐にわたる。地元へ貢献するDXプロジェクトは、特にやる気が出る業務だ。
菅 一緒にプロジェクトに取り組む人たちも皆リモートでの開発に慣れており、場所や距離が要因の弊害は何も感じず、やりたい業務に集中できていると思いますね。
私が感じている、IBM地域DXセンターで楽しんで仕事をできる人の特徴に「自分から動く」という点があります。例えばアサインされるプロジェクトについて、もちろん必要とされるスキルや経験はありますが、どんどん手を挙げることができますし、組織も一人ひとりの声にしっかりと耳を傾けてくれます。
きっと、広島拠点が立ち上がったばかりということも、関係しているかもしれません。思いの強い人は、自分のやりたいキャリアを積むことができますし、まだ経験の浅い人は、経験豊富な先輩と一緒に仕事をして経験を積むことができる。そんな絶好のタイミングが、今のIBM地域DXセンターだと思っています。
──菅氏はIBM地域DXセンターで働く喜びを「お客様からの高い期待に応えること」だと言う。
菅 「IBM」というと、誰もが知るネームバリューがありますよね。その理由を突き詰めると、「技術力」だと思うんですよ。技術力で信頼を得てきたIBMだからこそ、社内には豊富な研修コースやコンテンツがあり、常に学ぶことができる。IBMグループの一員である以上、最新の技術はもちろん、トレンドなども常に学び、知識をつけて自分を高めていかなければいけない。だからこそ、お客様の期待に対して常に最新の技術を提供できる。
そして技術力があるからこそ、キャリアにおいても興味のある領域でどんどん手を挙げてチャレンジできる。そんな厳しくも恵まれた環境で自分を磨いていくことを、エンジニアとしてのキャリアで大切にしていきたいです。
【働き方インタビュー 高松】これまでの経験×ITスキルで、付加価値の高いキャリア形成を
──武田氏は四国の愛媛県出身。造船企業に就職して設計の業務に携わるなど、ITとは異なるジャンルでキャリアを歩んできた。
武田氏
オートモーティブ事業部 アプリケーション・プログラマー
武田 前職の入社から8年が経ち、ある程度責任のある業務も増えてきた頃、転職を考えるようになりました。設計に関するツールを扱っているうちにプログラムという世界に興味が湧いてきましたし、30代という年齢的にも、チャレンジするなら今だ、と。
また、四国の職場という点にもこだわりました。転職でいきなり遠い場所に引っ越すのは、家族にとって負担が大きいなと。
そんなとき、たまたまニュースで「IBM高松DXセンター」の立ち上げを知りました。高松市の拠点から全国のITプロジェクトにチャレンジできるまたとない機会、「今しかない!」と思い、未経験で飛び込みました。
──IT業界は未経験で、業務はリモート。そう聞くとハードルの高さを感じるが、武田氏のキャリアチェンジはことのほかスムーズに進んだという。
武田 プロジェクトにアサインされる前にしっかりと研修があり、学習の機会は十分にありました。また、業務中は常にオンラインツールでメンバーとつながっていて、ちょっとした困り事や相談でも気軽に声をあげることができ、画面越しに先輩がわからないことを教えてくれます。リモートではありますが、メンバー同士の距離が非常に近くて、思っていた以上に仕事しやすい環境でした。
──武田氏の現在の住まいはIBM高松DXセンターの近く。リモート勤務可能ではあるものの、気分転換をかねて週に2~3回出社しているという。これも、高松市というコンパクトな街だからこそできる働き方だろう。
未経験でも、自らのキャリアは自らつくる
──製造からITへとキャリアチェンジを果たした武田氏。今後のキャリアについて聞くと、「今、目の前の仕事が非常に充実しているのですが」と前置きしたうえで、展望を教えてくれた。
武田 私がこれまで経験してきた製造業の経験を生かし、製造業界のDXを推進するプロフェッショナルを目指したいと考えています。現場の業務にテクノロジーをかけあわせれば、日本の製造業は、生産性をもっと向上するはず。
日本の製造業の活性化を現場で支える、そんなプロジェクトに取り組みたいですね。
実際に、上長とは定期的に面談の機会をいただき、3年後、5年後を見据えたキャリアについて相談を重ねています。IJDSにはさまざまな業界、地域の案件があり、業務も多岐にわたります。だからこそ、自らキャリアを考え、自分で描いていくことができると同時にそれを求められていると感じています。
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 (IJDS)の詳細は以下リンクよりご覧ください。
text by Koichiro Tayama / photographs by Shintaro Miyawaki / edit by Keita Okubo