企業の女性活躍を進める鍵に。ヘルスリテラシーを高めよう

Presented by パーソルキャリア

Ambitions編集部

日本企業における女性活躍は道半ばだ。世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数は低迷しており、2023年には世界146カ国中125位と過去最低となっている。企業が女性の持つ力を最大限引き出し、成長につなげていくためにはどうすればよいのだろうか。そのヒントとなるのが、「ヘルスリテラシーの向上」かもしれない。 俳優、タレント、経営者として活躍しているMEGUMIさんと、パーソルキャリアのコミュニティ「はたらく女性の活躍と健康を考える会」代表の松尾れいさんが、女性のヘルスリテラシーを高める意義について語った。

MEGUMI

俳優・タレント

1981年9月25日生まれ、岡山県出身。2001年、芸能界デビュー。映画『巫女っちゃけん。』『孤狼の血』『台風家族』『事故物件 恐い間取り』、ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』『偽装不倫』『伝説のお母さん』などに出演。2009年、第1子を出産。2020年、『第62回ブルーリボン賞』で助演女優賞を受賞。2016年、石川県金沢市にCafe たもんをオープンしオーナーを務める。

松尾れい

パーソルキャリア株式会社 DI&E推進部 マネジャー、コミュニティ「はたらく女性の活躍と健康を考える会」 代表

新卒で化粧品会社の代理店営業を経験したあと、2005年からNHKで報道番組を中心とした番組制作に従事。2013年10月からはリクルートグループで広報PRを経験。住まい領域においては、二拠点生活をする人たちのことを「デュアラー」と名付け、都会と田舎を行き来しながら生活するトレンドづくりの一端を担う。2020年9月にパーソルキャリアに入社。自身の女性特有の健康問題や不妊治療の経験から、女性の健康と「はたらく」の大切さを知ってもらいたいと、コミュニティ「はたらく女性の活躍と健康を考える会」を設立。ヘルスリテラシーの向上の取り組みを啓蒙・普及する活動に励んでいる。

根強い男女の役割意識 母親自ら人生の選択を

松尾(敬称略) 女性の選択肢を広げることを応援するコミュニティの代表として、芸能活動、カフェの経営など、ひとつの枠にとどまることなくキャリアを築いてきたMEGUMIさんとぜひお話をしたいと思っていました。

MEGUMI(敬称略) そう言っていただくとすごく励みになります。子どもが生まれたばかりの時は、自分の意思とは異なるところで「ママタレント」の枠にはめられたり、2016年に金沢市のひがし茶屋街に「Cafe たもん」をオープンした時は、「どうしてわざわざカフェのプロデュースを?」と言われたり。

やっていることが形になれば応援の言葉をもらえるようになるのですが、それまでは否定的な意見もたくさん浴びてきました。

松尾 日本にはまだ、「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という男女の役割意識が根強いと感じます。MEGUMIさんが経験してきたことは、企業で働く多くの女性も体験してきたことだと思います。

子どもが生まれると、女性が時短勤務を選ぶケースがほとんどです。普段の家事育児についても、女性の負担が重い家庭もいまだ多いです。

男性が仕事よりも子育てに力を注ぎたいと思っても、難しいケースが多いと言えるでしょう。2022年のパーソルキャリアの意識調査では、80%の男性が育休を取得したいと思っているものの、実際に育休を取得した人は15.4%にとどまることが明らかになりました。

MEGUMI 私も10年ほど前には、母親である私が仕事をすることに罪悪感を抱いていました。近くに母が住んでいたので、とても頼りにしていたのですが、「子どもを預けてまでどうして仕事をしているのだろう」と苦しくてしょうがない時期もありました。

松尾 私の子どもは今4歳で、仕事をしながら育児にも力を入れています。しかし、他人から「子どもが小さいのにそんなに頑張る必要があるの?」と言われ、罪悪感を覚えることもあります。

また、リモートワークが普及したことで在宅時間が増えたにせよ、子どもから見れば私が働いていることには変わりありません。

「ごめんね、今お仕事してるからちょっと待ってね」と言うことが口癖になってしまったんです。それに対して息子は「ママはなんでいつもちょっと待ってって言うの? 僕は今、ママと遊びたいのに」と。

MEGUMI それはとても苦しいですね。でも、子どもにとって、母親が働いていたことがトラウマになっているという話を聞いたことはないとも思うんです。私も含めて、母親は子どもに対する思いが強い。素晴らしいことではあるけれど、育児に100%の力を注がなくてもいいのではとも思います。

今はまだ小さい我が子も、いつかは独り立ちをする。母親の人生はそこから何十年も続くことを考えると、新しい世界との出合いや刺激にもなる仕事を続けるという選択肢もよいのではと思います。周囲の言葉に感化されて辞めてしまっても、その人たちは責任をとってくれません。全て自分の判断で、前に進んでいってほしいですよね。

疲れが出る前にセルフケア 40代女性の体との付き合い方

松尾 子育てや女性特有の体の変化に伴い、40代になってからはこれまでのように働くことが難しくなっていると感じています。本当の女性活躍を目指すには、そうした健康問題に対してどのように当事者や、所属先の企業が対処していけるかがすごく重要だと思っています。

今私は43歳で、女性ホルモンに振り回されていると感じています。同じ働く40代女性として、MEGUMIさんも健康面で変化を感じることはありますか?

MEGUMI 私は今41歳で、健康面のゆらぎを感じています。以前とは違う強烈な疲れを心身ともに感じて、「もう本当に無理」と思うこともあります。今年は月に1回ほどの頻度で体調を崩して、仕事が思うようにできない時期もありました。だからこそ、今ではセルフケアも仕事だと思って取り組んでいます。

朝はヨガ、この時間はマッサージ、はり、ここで瞑想をして、とスケジュール帳に書き出しています。思いついた時にやる、だとなかなか実行できないのですが、予定をビジュアル化するとその通りに動くことができるんです。

子どもが大きくなった今だからできることかもしれませんが、それくらいのケアをしないと今の私はやっていけない。放っておいたら、気持ちも体もダウンします。

40代になる前の女性にも、疲れが出る前に、毎日の歯磨きのようにセルフケアを習慣化してほしいですね。

松尾 私が代表を務める「はたらく女性の活躍と健康を考える会」では、「ヘルスリテラシーの向上が、女性たちに選択肢をもたらす。」というメッセージを掲げて、女性自身や周囲の人が女性の健康問題に取り組む必要性を発信しています。

しかし、セルフケアの重要性を知っている私ですら、子育てに追われているとなかなかその時間を確保できていなくて……。他にもこうした女性は多くいると思うのですが、どうすれば変わることができると思いますか?

MEGUMI これまで手をつけてこなかった扉を、勇気を出して開けてみることだと思います。私も、日中におしゃれなエステへ行くことはできませんが、行きつけにしている予約のいらない近所のエステやジムが数カ所あります。マッサージであれば、夜まで営業しているお店へ足を運んだり、もしくは家に来てもらったりすることも選択肢に加えてみる。自分を丁寧にケアすることで、周囲の人へ優しくしたり、仕事に前向きに取り組んだりできるようになると感じます。仕事や家庭のためにも、自分をまず大切にしてほしいですね。

女性活躍=昇進・昇格ではない 自分を知り多様なキャリアの選択を

松尾 MEGUMIさんの効率的な一日の過ごし方を聞いていると、日本でももっと生産性高く働く企業が増えればいいのにと思わざるを得ません。というのも、多くの人が当たり前のように残業をする日本で多様なキャリアを築こうとしても、育児との両立が難しいなど、キャリア選択の幅が狭まってしまいます。

残業が当たり前になっている理由はいくつかあると考えています。残業が評価される企業文化、長く働いたほうが成果が出やすい労働集約型のビジネスモデル……。こうした観念を変えないと、本当の意味での女性活躍を実現することはできないと思っています。

MEGUMI 私も子どもが小さい頃は、撮影現場の進行が遅れると常にドキドキしていました。みんなは残っていても、私だけが先に帰れば「ママだから仕方ない」という空気になってしまう。不思議なのが、帰る理由が「仕事」の場合には、私も周りもあまり気にしていなかったことです。

松尾 そういう現場を目撃してきた母親は、家庭では仕事をしていないかのように、そして職場では子どもがいないかのように振る舞うことも多いだろうと思います。これでは仕事と家庭の板挟みになってしまいますよね。こうした問題を解決するひとつの要素が、長時間労働の是正なのではと思っています。

パーソルキャリアには、形式的で無駄な仕事を削り効率的に働くことで、社員に仕事だけでなく人生を豊かに過ごしてほしいという考えがあります。小学6年生以下の子どもがいる社員には、月額1万円まで家事育児の代行サービスの費用を会社が負担するという制度もあるんです。母親がひとりで抱え込まず人に任せながら豊かに生きよう、という思いの表れだと思います。

MEGUMI そうした考え方や制度を広めることは、国をあげて取り組んでもらいたいですね。時間はかかると思いますが、事例が増えて、さらに売り上げも上がるような結果が出れば、少しずつ日本は変わっていくことができるのではないでしょうか。

松尾 母親だけを対象にするのではなく、女性の健康に寄り添う取り組みも必要です。働く女性を対象にしたパーソルキャリアの調査では、女性特有の症状を自覚している人が全体の74.9%、その中で仕事に支障があると回答した人が54.4%にのぼりました。

さらに、女性特有の症状を自覚している人の中で、働き方を変えた、または諦めたと回答した人は全体の54.1%となりました。つまり、その時の健康状態で、職場での役割分担を軽くしてもらったり、昇格・昇進を諦めたりしたということです。

社会進出という点だけでいえば、確かに多くの女性が働ける時代になりました。ただ、働く女性がやりたい仕事をできているのか、出産後も育児と両立しながら男性と変わらない働き方ができているのか、本当の意味で活躍ができているのかと考えると、まだまだ多くの企業が改善すべき点を抱えています。

MEGUMI 私の子どもが小さい頃は、もう現役じゃないと思われたくない、ちゃんと私も仕事ができていると、世の中に知ってほしいという思いがありました。でも、今はそんなことを気にする時代ではないと感じています。

松尾 最近は女性活躍推進、女性管理職比率の向上が声高に叫ばれるようになりました。しかし、それが「女性は管理職になるべきだ」というメッセージとして広まっていないか、懸念しています。

「今はマネジメントから外れたいフェーズです」という発言が、キャリアを諦めたと捉えられることもあるでしょう。そうした周囲の目が、自分のやりたいことや、大切にしたい価値観を発露させにくくしている側面があると思います。

働き方改革は進みつつも、昇進・昇格を是とする画一的なキャリア観を、まだどこかで引きずっている空気もあると思います。

MEGUMI でもそれって、実は東京だけの話である気もしていて。地方に行くと、自分のペースですごく素敵な環境をつくって、世界中からお客さんが集まるようなお店で働く人に出会うこともあります。

それはきっと、彼らが自分のペースを崩さないことに専念しているからだと思うんです。自分の価値観を守り、ぶれていない人は幸せそうですよね。

そのための一歩として、自分を知ることはすごく大事だと思うんです。しんどかったら休む、自分が嬉しいと感じるものを選ぶ、というシンプルなことも、仕事をしていたり、多すぎる情報を浴びたりすると、どうしても人と比較して本当の自分がわからなくなってくる。

周囲とのコミュニケーションの前に、まず己を知ることが、幸せなキャリアや私生活を築く土台になるのではないでしょうか。

自分も、周りも 女性の体をまず知ろう

松尾 己を知るという点でいえば、私は若い頃、自分の体に関する知識が本当に不足していました。月に一度寝込むほどPMS(月経前症候群)がつらかったのに、生理が終われば改善することがわかっていたので、病院に行かずに20年近く過ごしていたんです。

しかしそれを放置したことによって、子宮内膜症や子宮筋腫が見つかりました。子どもが欲しいと思って不妊治療を始めようとしたら、その時にやっと病気がみつかり、それが不妊の原因だったとわかったんです。

早めに対応していればよかったと、今では後悔しています。いざとなってからでは遅いことも多いので、多くの女性に早いうちに自分の体に関する知識を身につけてほしいと思っています。

MEGUMI 出産も人それぞれですよね。昔から「鼻からスイカが出る」ような痛みがあるとは聞きますが、実際に体験したら全然違う。そんなもんじゃないと私は思いました。女性の体に起こることや、それにどう対処すればいいのか、事前に何をすべきなのかという情報がしっかり届いてほしいです。

これまでたくさんの女性が体験してきたはずなのに、実際に自分の身に起きてみないとわからないことだらけ、というのもおかしな話ですよね。

松尾 会社が女性の健康や体の変化に配慮した対応をするためには、まずは一人ひとりと対話をすることが必要です。

自分の体についてオープンに話をしたい人もいれば、話したくない人だってもちろんいます。体調に合わせて、実際のアクションとして業務調整をしてほしい人も、話を聞いてほしいだけという人もいます。

MEGUMI 子育て中の母親は特に、自分に素直になって、必要な時にはしっかりアラートを出すことも大切ですよね。職場でも家でも、必要以上に自分だけが我慢をしないといけない理由なんてない。できるところは上手に力を抜いてほしいなと思います。

松尾 企業全体で女性の健康に向き合って、従業員に対して積極的なケアができるようになれば、日本の女性ももっと元気になることができるはず。その意識や取り組みが、本当の女性活躍につながるのではないでしょうか。

「はたらく女性の活躍と健康を考える会」とは

女性特有の悩みによって、仕事に支障が出ている人は少なくない。女性の健康について自身や周囲の人が正しい知識を得て、企業が女性をサポートする環境をつくることで、企業の生産性向上にもつながるものだ。そうした社会を実現するため、パーソルキャリアが立ち上げたコミュニティが「はたらく女性の活躍と健康を考える会」だ。

「当事者である女性自身」と「管理職」、「社会や企業」が女性に関するヘルスリテラシーを身につけ、相互に理解を深めることの必要性を理解してほしい。そして、真の女性活躍のために何に取り組んでいくべきか、探求していきたいという願いをもとに、活動の幅を広げている。

詳しい活動内容や調査結果は「はたらく女性の活躍と健康を考える会」WEBサイトにて公開中。

Presented by パーソルキャリア text by Mika Moriya / photographs by Sachiko Horasawa / edit by Mao Takamura

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