【武内和久北九州市長】北九州市に世界も注目。「稼げるまち」への転換で革命を起こす

田村朋美

ものづくりの街として強い基盤を持つ北九州市。そのポテンシャルがここ数年で次々と可視化されている。 北九州市の市長に就任して約1年半が経つ武内和久氏は、このNew Waveをどう捉えているのか。またこれから街にもたらすNew Waveとは。武内氏が語る。

武内和久

北九州市長

1971年生まれ。東京大学法学部卒業後、厚生労働省に入省。医療・介護・障害・子育て・少子高齢化対策に従事。外交官としてロンドン、9.11の際はワシントンに駐在し、これまで世界60カ国を訪問。その後ビジネス界に転身し、マッキンゼー・アンド・カンパニー、アクセンチュアで企業経営の支援に携わる。九州国際大学教授として北九州市の活性化をテーマに活動。BLOOMIN’ JAPAN株式会社を創業し、ヘルスケア・デジタル分野でスタートアップ支援等を行う。2023年2月20日、北九州市長に就任。

マーケティングと情報発信が、北九州市にもたらした変化

──市長に就任し、約1年半が過ぎました。北九州市にもたらした新しい動きを教えてください。

北九州市への“注目”と“投資”を確実に増やせました。就任から2024年3月までの企業誘致による投資額は2580億円で過去最高額を記録。これは、過去5年分の投資額約2700億円とほぼ同等なので、北九州市の持つポテンシャルが大きく覚醒し、それだけ多くの注目を集めた証拠だと思っています。

ほかにも、物流拠点化を進める北九州空港では、滑走路を現行の2500メートルから3000メートルに延長することが決まり、2027年からは大型貨物機の長距離運航が可能となります。また、風力発電関連産業の総合拠点として北九州響灘洋上ウインドファームが着工し、アジアでは類を見ないクリーンエネルギーの一大総合拠点が2025年度から運転開始予定です。

小倉城の入場者数も年間約26万人と、再建期以来過去最高を記録し、国内外から多くの方にお越しいただきました。ほかにも挙げ出すとキリがないのですが、あらゆる面でポジティブな動きが明確になり、市長就任前に予想していた以上に北九州市はポテンシャルにあふれていると強く感じています。「稼げるまち」にしていく、経済の活性化を中心に置くというベクトルに転換しただけで、こんなにもまちが動き始めるのかと実感した1年半でした。

──市長に就任し、約1年半が過ぎました。北九州市にもたらした新しい動きを教えてください。

北九州市への“注目”と“投資”を確実に増やせました。就任から2024年3月までの企業誘致による投資額は2580億円で過去最高額を記録。これは、過去5年分の投資額約2700億円とほぼ同等なので、北九州市の持つポテンシャルが大きく覚醒し、それだけ多くの注目を集めた証拠だと思っています。

ほかにも、物流拠点化を進める北九州空港では、滑走路を現行の2500メートルから3000メートルに延長することが決まり、2027年からは大型貨物機の長距離運航が可能となります。また、風力発電関連産業の総合拠点として北九州響灘洋上ウインドファームが着工し、アジアでは類を見ないクリーンエネルギーの一大総合拠点が2025年度から運転開始予定です。

小倉城の入場者数も年間約26万人と、再建期以来過去最高を記録し、国内外から多くの方にお越しいただきました。ほかにも挙げ出すとキリがないのですが、あらゆる面でポジティブな動きが明確になり、市長就任前に予想していた以上に北九州市はポテンシャルにあふれていると強く感じています。「稼げるまち」にしていく、経済の活性化を中心に置くというベクトルに転換しただけで、こんなにもまちが動き始めるのかと実感した1年半でした。

──北九州市のポテンシャルが目に見えるようになったのはなぜでしょうか?

興味・関心のひきつけ方を大きく変え、マーケティングと情報発信を徹底したからです。たとえばインバウンド戦略でも漠然と外国人観光客を招き入れるのではなく、どの国の人たちがどこを訪れて何を食べ、どれくらいお金を使ったのかなどさまざまなデータを集めて分析し、きちんとターゲティングして発信したことで大きな変化の兆しをつくれました。

この街は八幡製鐵所から産業革命を起こして日本の高度成長を支え、公害を克服して環境先進都市として発展するなど、100年以上にわたって日本を牽引してきた歴史があります。その本来持っていた力が、ようやく少し見えるようになってきました。

日本より世界が注目する技術やポテンシャル

──武内市長自身が気づいていなかった伸びしろはありますか?

気づいてはいたけれど、より一層強く感じた伸びしろは2つあり、一つはグローバル企業が集積していることの強さです。

北九州市には安川電機やTOTOなどグローバルなものづくり大企業と、確かな技術力でそれらを支える中小企業が林立しています。これはつまり、北九州市には世界とつながる技術や人材が集積していることを意味するので、世界を目指したい中小企業やスタートアップ、若者にとっても、ビジネス都市として多くのチャンスがあると実感しています。

もう一つは、環境先進都市としてのポテンシャルです。これは想像以上でした。900億円規模のリサイクル産業が立地し、大規模な洋上風力発電や太陽光発電、水素エネルギー拠点化に向けての取り組みなど、クリーンエネルギーの一大拠点となる大掛かりなプロジェクトが次々と進んでいます。

加えて、インド環境産業企業最大手「ラムキーグループ」が、初の日本法人を北九州市に設立しました。この日本法人を通じ、環境事業等へ約1億ドルを投資することも決まりました。

また、資源循環型社会の実現に向けた事業が集積している「北九州エコタウン」には、国内だけでなく、海外からも政府の要人をはじめ、多くの人々が視察に訪れています。北九州市はアジアでトップレベルのサステナブルな都市ですが、我々が思っている以上に、世界は北九州市の環境先進都市としての取り組みに関心を持っており、これはものすごく大きな武器になると考えています。

──北九州市のポテンシャルはなぜ知られていなかったのでしょうか。

これまでイメージチェンジに苦労してきたと思います。グローバル企業の集積や環境への取り組みも、北九州市の人々からするとそれらは“日常”で、特別なことではないと思っていた面もあるでしょう。

これから必要なのは、北九州市のポテンシャルを見える化し、自信を持ってチャレンジできる街だというマインドを市民の皆さんに持ってもらうこと。その上で、国内外に向けたマーケティングと発信を徹底すれば、より一層注目を集められるはずですし、北九州市は想像を超える進化を遂げると確信しています。

新しい価値観を体現し、多様なNew Waveを起こす

──これから起こしたいNew Waveを教えてください。

北九州市から新しい価値観をつくりたいと考えています。たとえば、環境とテクノロジーの掛け合わせによるサステナビリティを世界に先駆けて体現するのはもちろん、高齢化率が最も高い政令指定都市であることを高齢社会のフロントランナーであると捉え、先進モデルとしての価値観も確立させていきます。

過去に製鉄で国家を発展させる価値観をつくり出し、公害を乗り越えた先にサーキュラーエコノミー(循環型経済)の価値観を生み出してきたのが北九州市です。こうした歴史を持つからこそ、今後も課題をマイナスからプラスのチャンスに変え、新しい価値観を体現していけると確信しています。

また、価値観の新しい掛け合わせにもチャレンジします。たとえば、エコフレンドリーとスポーツの掛け合わせです。2024年6月に開催されたバレーボールネーションズリーグ2024では選手やスタッフのお弁当を廃止して、市内の飲食店で使えるミールチケットを配布しました。結果、フードロスは限りなくゼロになり、選手やスタッフが街を行き交う様子が見られました。今後も大規模な国際スポーツイベントを複数予定しているので、北九州市ならではのエコフレンドリーな取り組みを実現させていきます。

北九州市には産学官民が連携する基盤と、プロトタイプを作って新しいソリューションを生み出す素地があるので、若手人材が「首都圏ではなく北九州市にこそ解くべき課題がある」「北九州市には人類の最先端のイシューがある」と認識するようになれば、北九州市は社会課題を解決して世界に貢献する街になると信じています。

──今後、近隣市町や県、アジアなど越境した共創予定はありますか?

もちろんです。私は就任以来、メガリージョンというコンセプトを掲げてきました。グローバルから見れば、北九州市は日本という一国の小さな街でしかありませんが、福岡市や下関市を含めれば、北部九州で400万人規模の経済文化圏が生まれます。今後、このエリアは日本の3大都市圏に続く、第4の都市圏になれると考えています。北九州市と福岡市がその中核を成すツインシティとして北部九州圏の“メガリージョン”を牽引し、周辺市町とさまざまな分野で連携しながら、アジアや世界と対峙していく。そして北部九州エリアの発展を日本経済の大きな底上げにもつなげていきます。

北九州市はどんどん面白くなっています。これまでの歴史の中で培われた大きなポテンシャルが、今まさに形となって動きはじめています。これから飛躍の時を迎えようとしている北九州市にぜひ注目してください。

text & edit by Tomomi Tamura / photograph by Yasunori Hidaka

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