九州のビジネスリーダー8名が語る、地域経済の野心

Ambitions FUKUOKA編集部

コロナ禍による混乱が収束し、ビジネス環境が次のフェーズへ突入した2024年。地域経済を牽引するビジネスリーダーたちは何を思い、どんな野心を抱いているのだろう。 2024年1月12日に開催された「ONE KYUSHUサミット 宮崎」より、登壇者たちが語った展望を抜粋して紹介。九州経済の今と未来の可能性を届ける。 ※「ONE KYUSHUサミット 宮崎」(2024年1月12日)より

「市制100周年を迎える宮崎市 更なる公民連携の推進に取り組む 」宮崎市長 清山知憲氏

現在、宮崎市では総合計画を作成しており、その中心となるコンセプトが常に門戸が開かれた開放的なまちづくり「オープンシティ」です。

多様な人や企業が自由に繋がりチャレンジしていくまちを目指します。

その中で、令和6年4月に民間が中心となり事業に取り組む「(仮称)宮崎オープンシティ推進協議会(通称:MOC)」が組織されます。MOCは、若い人たちが新しいビジネスに挑戦できる環境と刺激を受ける場を創ってくれると期待しています。

公のフィールドで民間の活力を導入していくことを推進していきたいです。

「世界に開き、個人の力で稼ぐ」 一平ホールディングス 村岡浩司氏

地域の活性化の鍵となるのは「個人の得意分野」です。デジタルを活用する、クライドファンディングで調達するなど、ビジネスの手法も大きく変わっており、個々の得意分野で戦いやすくなってきています。同じ志を持った人が集まりコミュニティを形成して商いをする、場の概念すらよりシンプルになってきたような気がします。

また、今回のイベント「ONE KYUSHUサミット」は“2030年の九州”をテーマにしていますが、外国の地図には載っていない「九州-KYUSHU」という素敵な地域を、いつか世界は発見すると信じています。

九州というひとつの島の存在とその魅力、そして自分たちの存在を、外の人たちにもっと知ってもらうよう考えていくべきです。労働人口が減っていく中、世界に開き、稼ぐ。それを伝え続けていきたい。

※2024年1月11日開催「ONE KYUSHU サミット宮崎 前夜祭」登壇時の発言より抜粋

「地方が東京を見る時代は終わる」Glocal K 持留英樹氏

近い未来、地域、特に九州は、東京を向いたビジネスから脱却すると思います。福岡では以前から「アジアのリーダー都市」を目指すと掲げてきましたが、実現に向けて動くときです。アジアとのビジネスで外貨を稼ぎ、ビジネスの単価を上げていく。東京とは賃金格差がありますが、九州の賃金を上げて格差をなくす。そして、みんなで豊かになっていく。

今、面白いビジネスリーダーたちがどんどん九州に集まってきています。ステークホルダーが混ざり合うことで、九州ならではの価値が生まれると確信しています。

「子育てを、家族から地域の手へ」グッドバトン 園田正樹氏

私は育児に取り組む家族が「病児保育」をより気軽に利用できるよう、事業に取り組んでいます。これから目指す未来は、子育てを「家族」だけじゃなく「地域全体」で担うようになる未来です。

地域の人たちが地域の子どもたちの子育てに参加する──ある意味、昔の地域社会に戻るイメージです。しかし今の時代、昔とまったく同じかたちでは実現できません。

テクノロジーの力を活用し、専門家の知見を加え、行政との連携を模索しています。新しいかたちによって、地域社会による子育てを当たり前にしていきたいです。

「ビジネスの根底を問い直す時代の到来」ライトライト 齋藤隆太氏

人口減少が進み、世の中の収斂が始まっています。これからあらゆる地域でインフラ機能が衰退し、住みたい場所に住めなくなることを受け入れざるを得なくなると考えます。

そのような近未来では、あらためて「個人の幸せ」のかたちが問われることでしょう。ビジネスにおいては今一度、商品やサービスが「誰を幸せにしようとしているのか?」を考え直す必要があります。資本主義の成長も必要な一方で、地域の中で自分たちの周りの人々の幸せを実現できる経営者が増えていくことを願います。

「地域が持つ価値に気付き、ビジネスで磨き未来をつくる」博報堂ケトル 日野昌暢氏

地域には、その土地の人たちからすると当たり前すぎて価値があると認識されていないものや、価値を発揮できる状態になく眠っている資産が沢山あります。例えば、日本ではよくある田園風景。海外からの観光客の方にとっては、そんな田園風景で地域の人と会話することが、大きな価値になると気づいて、そのような日本的な日常の体験をツアーにして人気を博しているケースも生まれています。

地域資産を観光資源として生かしていくには、①価値を感じてもらえるように、地域資産を編集する。② 感じてもらえる価値から収益の上げ方と、顧客の獲得をどう設計するか。の2つを考えることです。地元で未来を背負う人々が本気で取り組むことはもちろんですが、地元では気付けない価値に「外から目線」で気づいてくれる地域外の人たちともコラボレーションしながら磨き上げていくことが、これからの地域活性には必要でしょう。

「自分の想いから、つながり合い、地域課題を共に解決しよう」Takumi Inc. 川原卓巳氏

2030年を見据えると、人口減少の進展など、データ上では暗いシナリオが見られます。ただ、その中で暗い気持ちのまま生きていく必要はないと思っています。

その理由は、世界中の人々とやりとりする中で「自分自身が何に幸せを感じるのか/ときめくのか」を考えて素直に生きる人が増えていると実感しているからです。

地域課題に関しても同じく「どういう貢献をするか」「どう役割を担うか」について考え、地域の人同士が一緒に「何のために力を合わせるのか」という会話をできたなら、大きく前に進められるはずです。つながり合うことで自分ごととして考え、動けるようになるでしょう。

「“地球”規模で“地域”課題を解決すべき時代」AGRIST 齋藤潤一氏

僕は農業スタートアップの代表として、人口16,000人の小さな町から世界の食糧課題の解決に取り組んでいます。今この瞬間、8億人もの人々が食べ物に困窮している中、日本ではどんどん食べ物が捨てられている。この不均衡によって、どこかで歪みがくると思っています。

地域課題の解決に関しても、地域の外を含めた大きな視点で考える必要があると思います。もし仮に自分たちの町だけがよくなればいいと考えていたら、そもそも事業としても成り立たちません。事業を行う地域で得たデータを全国の課題解決に活用したり、グローバルに展開したりと、広い視野をもつべきです。小さな地域からチャレンジすることで人・モノ・金の動きが変わり、ひいては世界の課題解決に貢献する。そんな未来を目指していきます。

九州のプレーヤーが集まり、2030年の未来を語りあう1日

2024年1月に開催された「ONE KYUSHUサミット 宮崎」。九州経済をリードする多様なキーパーソンが集結し、1日かけて九州の未来のあるべき姿、その実現に向けたアクションなどについて熱く語り合った。

人口減少、地域機能の低下といった目の前の課題がある一方で、大阪万博とともに訪れる好機など、やビジネスチャンスも多い。2024年から始まる、地域経済の新たな胎動が見られた。

text by Tatsuhiro Watanabe / text & edit by Keita Okubo

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