JR九州の古宮社長に、仕事の悩みを相談しよう【Ambitionsビジネス酒場】(前編)

Ambitions FUKUOKA編集部

悩みを抱えるビジネスパーソンが集まる「Ambitionsビジネス酒場」。ここは、普段なかなか会えない大企業のトップに、仕事の悩みを相談できる、秘密のお店です。今回のスペシャルゲストは、九州を代表する企業のひとつ、JR九州の古宮洋二社長。相談者は、地元スポーツクラブからIT企業、スタートアップ経営者など6名。ここだけの仕事の悩みを相談します。 ビジネス酒場、開店です。

古宮洋二

九州旅客鉄道株式会社 代表取締役社長

ビジネス酒場の過ごし方

・ひとりずつ、お酒1杯分(10分程度)の時間で、古宮さん悩みを相談する
・古宮社長と相談員の「乾杯!」から相談スタート

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冷やしトマト、あぶり明太子

【一杯目】アビスパ福岡 佐川さん「アビスパを人気クラブに成長させたい!」

ひとり目の相談者は、アビスパ福岡のマーケティングを担当する佐川さん。悩みは、あまりに強力な福岡の野球チームとの、「差」です。

佐川諒

アビスパ福岡株式会社 マーケット開発部 マーケット開発部

佐川 私は2年前に福岡に移住してきたのですが、福岡で圧倒的な人気を誇るソフトバンクホークスの影響力を肌で感じています。アビスパも去年はルヴァンカップで優勝しましたが、観客動員数はJ1で単独最下位。野球人気の高い福岡で、どうすればアビスパも人気クラブに成長していけるのか、アドバイスをいただきたいです。

古宮社長 野球の場合は、特にドームならではの「一体感」がありますよね。

たとえば、野球には得点圏に走者を置いた状態で打席を迎えると、ファンファーレに合わせてファンが一斉にジャンプする「稲葉ジャンプ」のような名物応援があって、カメラが揺れるほど球場全体が”熱狂”で包まれます。

サッカーもサポーターを中心に全体で盛り上がるような工夫があれば初めて足を運ぶ人たちも「行って良かった」「楽しかった」と思えて、次につながるのではないでしょうか。

佐川 実は、周囲に話を聞いて回ったところ、「ソフトバンクホークスの試合は観に行ったことがあるけれど、アビスパの試合は一度も行ったことがない」なんて声もよく聞くのです……。

古宮社長 もし今、空席があるなら、地域の小中学生や高校生を無料招待するなどしてまずはスタジアムを満席に埋めましょう。そこで全体が盛り上がる工夫をすれば、将来のファンづくりにもつながるのではないでしょうか。

佐川 スタジアムを埋めることが大切ですね。検討してみます。

まだ少し時間が残っている(お酒が残っている)ようですので、もう一つだけいいですか。私は転職でアビスパに入ったのですが、共に活動している30名ほどのチームは、みんな専門性が異なり、チームというよりも個人商店のようだと感じています。もっと、一体感を生むにはどうすれば良いでしょうか?

古宮社長 私は、目標を達成したときや何かしらのトピックがあったときは、みんなで集まって共有する、喜びを分かち合う、食べて飲んで一つにまとまるというのを大切にしています。

アビスパでも、優勝など大きな目標を達成したときに、社長が全員に声をかけてみんなで集まるのが大事だと思います。飲み会でもいいし、記念旅行でもボーリング大会でもいいかもしれない。何かをきっかけにみんなで集まる機会をつくることが大切だと思いますよ。


【二杯目】LINEヤフーコミュニケーションズ 村上さん「社内で活発なコミュニケーションを実現するには?」

続いては福岡のIT企業を代表する「LINEヤフーコミュニケーションズ(元・LINE Fukuoka)」の村上さん。本部長としてチームを率いる立場として、メンバーとのコミュニケーション頻度について悩んでいるそうです。

村上恵梨子

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 グローバルオペレーション本部 本部長

村上 去年10月、私の所属する「LINE Fukuoka」が、グループ会社「LINE」と「ヤフー」などの合併の流れで、ヤフーのカスタマーサポート部門と組織の統合を行い、「LINEヤフーコミュニケーションズ」に生まれ変わりました。組織が変わり、急激に人数が増え、メンバーとのより良いコミュニケーションの取り方を模索しています。古宮社長は、社内で対話を行うにあたって、どのような点を大切にされていますか?

古宮社長 私は社内で「顔の見える距離でメール禁止令」を出すくらい人と人が直接話すことを大切にしていますし、部下にもそれを伝えています。

村上 しかし、JR九州さんは大企業。そのトップともなると、社員さんと会話する時間をつくることすら、難しくなるのではないでしょうか。

古宮社長 そうですね、JR九州単体でも約7600人の従業員がいて、全員と同じ時間をとって話すのは難しいのは確かです。そこで私自身の目標として「全社員の名前と顔を一致させること」を課しています。いまはまだ2000人くらいですかね、顔と名前がわかる人は。これはもっと増やしていきたい。

また、コミュニケーションをする機会でいうと、月に1回以上は、各社員と意見交換する会を設けるなど、業務にコミュニケーションの機械を組み込むようにしています。

村上 私も1on1でメンバーと話す場を設けていて、好きな音楽などメンバーの業務以外の情報も覚えてコミュニケーションに生かしています。ちなみに、古宮社長は社員とのコミュニケーションを図るために、定期的に飲み会を企画しているそうですね(本イベント取材の元ネタ)。私もお酒は好きですが(笑)、どのように運営しているのでしょうか。

古宮社長 飲み会は18時から21時までで、入れ替えの3部制です。1部につき30人の人数制限を設けて4テーブルに分け、各テーブルを15分ずつ回って話を聞いています。参加する社員は何か言いたくて来ているので、話題に事欠かないですし、3部に参加する人は他の居酒屋で飲んだ後に二次会で来るケースが多いです。

村上 「二次会」で社長に会いにくるのですね! 印象的だった質問があれば教えてください。

古宮社長 ある時、私に新規事業アイディアをぶつけて来た社員がいました。その時は、事業アイディアが会社の方向性と違っていたので「それはダメだ」と突き返したんですね。

すると1週間後にまたプレゼンに来てブラッシュアップして来たんですよね。実際、今はその事業を進めているところです。

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ニラたま

【三杯目】寶結 福岡さん「大企業のトップが持つ、経営の覚悟とは?」

3人目は、北九州市に拠点を置く若き経営人材である福岡さん。「約10分、古宮社長を独占します!!」とほろ酔い気味のテンションでテーブルにつきます。

福岡広兵

寶結株式会社 スタートアップ支援事業本部 本部長

福岡 JR九州さんとは全くレベルが違いますが、私自身も経営サイドでお仕事をさせていただいております。かつて古宮社長が、社員から経営サイドに行かれた時当時の、気持ちの変化などはありましたか?

古宮社長 私がJR九州の取締役になったのは12年前、49歳の時ですが、特に何も変わりなく、気にもしませんでした。ただ、企画部長から運輸部長、経営部長、そして取締役と肩書きが変わっただけです。変化があるとすると、7年前にJR九州が新規上場した時ですね。改めて、責任の重さを感じました。

福岡 大きな組織をまとめていくのは相当なプレッシャーやストレスがあると思いますが、どのようにコントロールされてきたのでしょうか。

古宮社長 プレッシャーはたくさんあるけれど、優秀な部下がたくさんいるから心配していません。社長に就任した時も、全社員の前で「私には皆さんがいるから、全く不安がありません」と伝えました。

福岡 最高ですね……。私は取締役として、全社員により強い責任感を持ってパフォーマンスをしてもらいたいと考えているのですが、そのために何が必要だと思いますか?

古宮社長 とにかく、社員をきちんと知ることです。そして社員の力が10だとしたら、11や12の少し高い目標を持ってもらい、達成したらとにかく褒める。「あなたはここまで頑張れるから、達成に向けて頑張ろう」と話すことが大事です。

そのために私は、会社のすべての見える化に取り組んでいます。自分の力はどのくらいで、ここまで頑張れば給料が上がるといったことが、クリアにわかるようにしたいと思っています。

福岡 古宮社長が現役の頃は、褒めて伸ばすような時代ではなかったのではないかと思います。それでも褒めることを推奨する理由は何でしょうか。

古宮社長 だって人間だもの、褒められると嬉しいよね(笑)。何かを達成したら、よくやったと褒めて次に行く。せっかく頑張って成果を出したのにご褒美がないとやる気は出ないと思います。


JR九州、古宮社長によるお悩み相談企画「ビジネス酒場」、前半はここまで。

後半もさまざまなビジネスパーソンが登場し、お酒を片手に悩みを相談します。

公開取材では「SHOCHU X」様からプレミアム焼酎を提供いただきました

text by Tomomi Tamura / photographs by Yasunori Hidaka / edit by Keita Okubo
協力:WeWork ゲイツ福岡、やまちゃん 中洲店 撮影協力:WeWorkゲイツ福岡

#働き方

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Ambitions FUKUOKA Vol.2

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Scrap & Build 福岡未来会議

100年に一度といわれる大規模開発で、大きな変革期を迎えている、ビジネス都市・福岡。次の時代を切り拓くイノベーターらへのインタビューを軸に、福岡経済の今と、変革のためのヒントを探ります。 また、宇宙ビジネスや環境ビジネスで世界から注目を集める北九州の最新動向。TSMCで沸く熊本をマクロから捉える、半導体狂想曲の本質。長崎でジャパネットグループが手がける「長崎スタジアムシティ」の全貌。福岡のカルチャーの潮流と、アジアアートとの深い関係。など、全128ページで福岡・九州のビジネスの可能性をお届けします。