【小橋賢児】STAR ISLAND独占インタビュー。福岡から世界へ、熱狂を響かせる

Ambitions FUKUOKA編集部

2017年から世界各国を巡り開催してきた「STAR ISLAND」。日本発・グローバルに展開する“未来型花火エンターテインメント”として、世界の人々を魅了した。そして2024年5月、5年ぶりに日本に凱旋。開催地に選んだのは、福岡だった。 なぜ他の都市ではなく、福岡なのか。その狙いについて、総合演出を担当した小橋賢児氏にインタビューを実施。「エンターテインメントビジネスの地」としての福岡のポテンシャルを探る。 ※STAR ISLAND : 花火、音楽、照明、特殊効果を融合させた未来型花火エンターテインメント。

小橋賢児

1979年東京都生まれ。8歳で俳優デビューし、多くのドラマや映画に出演。2007年に芸能活動を休止。世界中を旅した後、「ULTRA JAPAN」などの海外イベントを日本に導入する際の牽引役として活躍。2021年には東京パラリンピック閉会式のショーディレクターに就任。現在、「STAR ISLAND」の総合演出をはじめとする様々なイベントのクリエーターとして活動の幅を広げている。

凱旋地に福岡を選択決め手はアートに寛容な風土

──「STAR ISLAND」は、シンガポールやサウジアラビアなど世界各国で開催され、高い評価を受けてきたそうですね。5年ぶりの日本開催、かつ初上陸となる福岡での開催を決めた理由をお聞かせください。

ひとつは、福岡は個人的にとても好きな都市だからです。福岡の活気やエネルギーには惹かれるものがあります。成長と拡張を続ける大都市ならではの勢いがありながらも、人柄の温かさやコミュニティの結束がしっかりと根づいているところが魅力的です。

また、福岡はアジアのゲートウェイとして、国外の観光客が訪れる国際都市です。「STAR ISLAND」はこれまで日本発の未来型エンタメとして世界で開催してきました。今度は世界から「STAR ISLAND」を目がけて日本に人が訪れるような循環を起こしたかったので、国際都市の福岡での開催は、国内外から多くの観客を集めるためにも最適だと考えました。

さらに、福岡市はアートで街づくりを進めることを宣言しており、エンタメに寛容です。官民一体となってイベントの成功をアシストする環境が整っています。これは「STAR ISLAND」という新しいスタイルのエンタメを成功させるためには重要なポイントです。実際に福岡で開催してみて、新しいことに対して非常にオープンで、挑戦を受け入れる文化が根づいていると実感しましたね。

「STAR ISLAND FUKUOKA 2024」開催時の様子

──福岡での開催はどのような意味や価値があったとお考えでしょうか。

福岡開催は新しい視点や発想を生み出すきっかけになったと思います。「STAR ISLAND」は、花火やドローンショーのような視覚的なコンテンツに加え、音楽やストーリーテリングを組み合わせた総合的な演出を通して、鑑賞者の多様な視点や感性を刺激することを目指しています。大事にしているのは、演出側の表現や感性を押し付けるのではなく、見る人によってさまざまな受け止め方ができるようなエンタメにすることです。

その観点からすると、地元の方々だけでなく、世界中から観光客やビジネスパーソンが集う福岡は、多様な視点や感性が交わる場所です。それにより、エンタメが娯楽の枠を超えて、より豊かで価値のある体験になり、感動が増幅する可能性が広がります。実際に福岡開催を終えて「STAR ISLAND」の反響を耳にすると、こんな受け止め方があるのかと僕自身も新しい視点を持てました。

挑戦が生む新たな景色。福岡で広がるエンタメの未来

──エンターテインメントビジネスの地として、福岡にはどのような魅力があると思われますか。

福岡は“新しさ”を積極的に取り入れて、“新しい景色”を創り出せる都市だと思います。僕も福岡が持つ独特のエネルギーやクリエイティブな雰囲気から大きなインスピレーションを得ました。

僕は2025年大阪・関西万博の催事企画プロデューサーを担当していますが、万博の催事コンセプトを「その一歩が、未来を動かす。」にしました。これは元宇宙飛行士・毛利衛氏の「多様な環境の中で命が紡がれてきたのは、個の挑戦が、個の一歩があってこそ」という言葉に影響を受けて決定しました。混沌とした時代に誰かが一歩を踏み出すことが、世界を変えます。

エンタメは閉塞感を打ち破り、景色を変え、人々に新たな可能性を示す力があります。人は変化を目の当たりにすると心が躍るものです。しかし、世界ではエンタメの分野で新しいチャレンジが続々と生まれているのに、日本では規制が厳しく実現が難しいことも。

例えば「STAR ISLAND FUKUOKA 20 24」では、1万3000発の花火と1000機のドローンを使った大迫力の演出を実現しました。当日の様子がSNSで拡散され、福岡の人の多くが「こういうことが地元でできるんだ」という変化を感じてくれました。その認知が広がれば、エンタメのチャレンジが波及していくはずです。

「STAR ISLAND」は花火という伝統をイノベーションして、日本が培ってきた感動の文化を新しいかたちで次世代に継承する挑戦をしています。僕は「伝統は守るものではなく、常にイノベーションし続けることでこそ伝統になる」と思っています。常にチャレンジを続けることで、他の人々もそれにつられて挑戦し、新たな一歩が次々と生まれるはず。福岡にはそれを牽引する都市であり続けてほしいです。

text & edit by Yoko Sueyoshi / photographs by STAR ISLAND FUKUOKA 2024


「STAR ISLAND FUKUOKA 2024」

2024年5月11日、「STAR ISLAND FUKUOKA 2024」が開催された。「STAR ISLAND」の入り口にあたるみずほPayPay福岡ドームでは「THE GATEWAY」をコンセプトに、レーザーにアートを掛け合わせた没入型エンターテインメントを体験。博多湾に面したウォーターフロントの地行浜(じぎょうはま)に向かうと、DJブースやパフォーマーが明るいうちから会場を盛り上げていた。

夕暮れに差し掛かる頃、いよいよショーがスタート。1万3000発の花火と1000機のドローン、ステージパフォーマンス、レーザー、3Dサウンドの融合で、約100分間にわたり人生という旅がさまざまな演出で表現された。ラストのドローンショーでは福岡限定の「福岡タワー」が夜空に出現するとひときわ歓声が沸いた。スタートから異空間に誘われ、ラストまで五感を刺激されたショー。一夜限りの非日常空間を楽しめた。

text by Tomomi Tamura / photographs by STAR ISLAND FUKUOKA 2024

Ambitions FUKUOKA Vol.2

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100年に一度といわれる大規模開発で、大きな変革期を迎えている、ビジネス都市・福岡。次の時代を切り拓くイノベーターらへのインタビューを軸に、福岡経済の今と、変革のためのヒントを探ります。 また、宇宙ビジネスや環境ビジネスで世界から注目を集める北九州の最新動向。TSMCで沸く熊本をマクロから捉える、半導体狂想曲の本質。長崎でジャパネットグループが手がける「長崎スタジアムシティ」の全貌。福岡のカルチャーの潮流と、アジアアートとの深い関係。など、全128ページで福岡・九州のビジネスの可能性をお届けします。

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