地域×スタートアップの共創機会を育む KPMGジャパン「福岡型・共創エコシステム」に本腰の理由

Presented by KPMGジャパン

Ambitions FUKUOKA編集部

2023年11月、KPMGジャパンの4つの組織「あずさ監査法人」「KPMG税理士法人」「KPMGコンサルティング」「KPMG FAS」は、福岡事業所に集結し、“One KPMG”としてスタートアップ支援を加速させる。福岡のスタートアップが直面している今の課題をどう捉え、どう向き合おうとしているのか。2人のキーパーソンに聞いた。

阿部 薫

株式会社 KPMG FAS 執行役員 パートナー 福岡事務所長

メガバンクなどを経てコンサルティング会社に転籍。2016年にKPMG FASに移籍し、メガバンクや地方銀行をカバレッジしつつ、地方企業や行政、教育機関などへのソリューション開発及び業務提供を実施。2020年の福岡事務所開設と同時に所長に就任。

伊藤貴比古

KPMGコンサルティング株式会社 執行役員パートナー

コンサルティング会社で各種プロジェクトに従事後、自らベンチャー企業の設立から売却まで携わる。その後、KPMGコンサルティングに入社。スタートアップと事業会社の協業によるオープンイノベーション領域の推進をリード。

地域には、事業の共創経験が足りない

──KPMGジャパン(以下、KPMG)では、全国各地で地域の企業とスタートアップとのオープンイノベーション支援を展開されています。これまでの取組みについて伺えますでしょうか。

阿部氏 私が所属するKPMG FASは、企業のM&Aや事業再生を支援するアドバイザリーや、経営戦略の策定と実行を支援するストラテジーを事業の柱にしています。スタートアップ向けには、M&Aや組織再編の検討、CVC、企業戦略の策定などのソリューションを展開しており、企業活動のあらゆるフェーズでの総合的なサポートを得意としています。

東京本社在籍時代の私の主要ミッションは、地域の企業のM&Aや事業再生を支援して地方創生へ貢献していくものでした。しかし実際に取り組む中で、地域全体の活性化には、事業が生まれる“土壌”からつくるべきだと考えるようになりました。

そこで、主に首都圏で実施されていた大手企業とスタートアップによるオープンイノベーションを、地域の企業向けにプログラムとして展開することにチャレンジしました。狙いは、協業による事業化の経験を持つ企業を、地域に増やすこと。首都圏に比べ、地域には協業の機会が足りません。継続的にオープンイノベーションのプログラムを実行することで、地域に事業の共創経験のある企業が増え“協業の土壌”ができていくと考えています。

伊藤氏 KPMGコンサルティングは、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジートランスフォーメーション、リスク&コンプライアンスの3分野から企業を支援しています。私の所属する「ビジネスイノベーションユニット」では、オープンイノベーションを軸としたスタートアップ支援や、IPOに向けた経営管理全般をサポートしています。

これまで九州では、主に地域の企業の第二創業や新規事業の立ち上げを支援してきました。地域の企業が新しいビジネスモデルを構築する中で、自社では調達できないソリューションがある場合、新たな技術を持つスタートアップと共創することでビジネスが生まれます。

私たちはマッチングの機会提供に加え、ビジネスモデルのブラッシュアップをサポートしながら実証実験につなげていく役割も担っています。

起業の環境が醸成された福岡 飛躍の肝はグロース支援

──福岡におけるスタートアップシーンの現状についてお聞かせください。

阿部氏 福岡市は2012年に「スタートアップ都市」を宣言し、この10年ほどでスタートアップが活動できる環境や、コミュニティ形成のためのイベントなど起業支援が大幅に拡充しました。しかし、すべてが順調というわけではありません。例えばグロースに関しては課題があります。環境は整っているはずなのですが、福岡発のスタートアップが地元に留まりつつ大きく成長しているケースは、まだまだ少ない状況です。

伊藤氏 スタートアップが地域の企業との共創を通して成長するには、協業の“質”を高めていくことが欠かせません。そのためには、地域の企業側も、協業プロジェクトにしっかりとコミットしなければいけません。

ただ、大きな企業はジョブローテーションで担当者が変わり、途中で頓挫してしまうことも多々見受けられます。これは福岡に限らず、東京でも同様です。双方がアグレッシブに協業を推進するマインドと仕組みが必要です。

阿部氏 今回スタートアップ支援を本格化する福岡は、行政や地元の大手企業の支援の成果もあって起業の環境はすでに醸成されており、他エリアに先行するスタートアップ都市だと捉えています。ここからさらに飛躍を目指すには、スタートアップと地域の企業が継続して協業できる“エコシステム”の構築が必要ですし、そのためにKPMGとして様々なソリューションで、協業から事業化、グロースまでの実行の部分を多面的にアシストしていきたいと考えています。

11月にKPMGの4組織が福岡にそろいますので、この動きを加速させます。プレシードからExitまで、スタートアップの成長ステージにコミットする支援を“One KPMG”で行っていきます。

東京の横展開ではない 対話を通し、地域に寄り添う強み

──これからの福岡拠点での活動について、どのような展開を予定されていますか。

阿部氏 まず理解していただきたいのは「東京のソリューションをただ横展開するために、福岡に集結したわけではない」ということです。経済規模や文化、特有の課題など、様々な点で福岡と他の都市は異なります。

メンバー全員が福岡のビジネスカルチャーを理解し、われわれの感覚に馴染ませた上で「福岡型」にカスタマイズした支援やソリューション提供を実行していくことこそが、目指していることです。「(福岡の人々と)同じ感覚でコミュニケーションを取れる気軽な相談相手」として対話してもらえるよう、腰を据えて取り組んでいきます。

伊藤氏 そのためには“対話”が何よりも重要です。スタートアップが成長していく過程には、しっかりと膝を突き合わせて議論しなければ解決できない複雑な課題が多々あります。この土地で生まれた価値のある事業を成長させるためにも、福岡の拠点からKPMGのソリューションを提供できることには大きな意義があります。

ゆくゆくは、地域や業界の課題を共有するビジネスのハブとなり、地域の様々なプレーヤーとともに解決していく、そんな取組みも検討していきたいですね。

Key Person Intervew

「対話」によるスタートアップ支援

阿部興直

有限責任 あずさ監査法人 福岡事務所長

あずさ監査法人は、企業に寄り添って「対話」することを大切にしています。「対話」とは単なる会話ではなく、あるゴールに向かって、お互いの意見を擦り合わせていくことと捉えています。一言で「監査」と言っても、深く「対話」を行うかどうかによって、実態把握に差が生じ、監査の質は異なるものになります。加えて、様々な「対話」を通して付加価値を提供することもできます。

スタートアップ支援としては、監査・ショートレビューのほか、財務関連アドバイザリー、株式上場、資本政策立案、経営・財務人材教育などの領域でソリューションを提供しています。これらのスタートアップ支援においても、当法人の「対話」力を活かすことができると考えています。例えば、ショートレビューで、会計処理や内部統制に関する企業の課題を洗い出した後、それらの課題をどのように解決するのか検討する必要があります。

私たちは、企業の状況を理解するために「対話」を重ね、企業に伴走し、最適な会計処理や内部統制をともに考えます。「対話」を得意とする私たちの支援が有効に働く部分だと考えています。

また、当法人では内部統制やIPO準備の他に、起業家育成や大学連携の支援も展開しています。2023年6月には九州の各大学と連携してフォーラムを開催し、大学発ベンチャーヘの支援強化に乗り出しています。福岡はマーケットとしても魅力的であり、福岡で起業するスタートアップには大きな伸び代があります。今後、より多くのスタートアップとの「対話」を通して、福岡を盛り上げていきます。

ビジネスと税法の両立を重視。先行事例の還元で成長をアシスト

渡邊直人

KPMG税理士法人 福岡事務所長

KPMG税理士法人では、各分野に精通した税務専門家チームが、スタートアップの資金調達手法、ストックオプションに関する税務アドバイス、国際税務アドバイス、税制に関する情報提供などをとおして、スタートアップの活動をサポートしています。

現行の税法は、新たな価値を創出するスタートアップのビジネスに適合できているとは言えないのが実情です。税の専門家がスタートアップのビジネスを理解していなければ、税法によるリスクを強調しすぎてスケールを阻む要因になりかねません。スタートアップが成長するためには、税法とスタートアップのビジネスの両方に詳しく、バランスを取れる専門家が不可欠です。

私はかつてIT企業に在籍しており、直近まで東京のスタートアップ支援に従事してきました。「税法がビジネスの芽を摘んではならない」という信条に基づき、法律とビジネスのバランスを取りながら、福岡のスタートアップを支援していきます。

また、東京で先行しているスタートアップの様々な事柄を経験している点も強みです。福岡発のグローバルベンチャーを目指すにあたり、きっと参考になる好事例や失敗例をお伝えすることができます。お気軽にご相談いただければ、力になれることは多いと自負しています。

One KPMGで実現する、福岡のスタートアップ支援

資本市場のインフラとして、地域の健全な変革を目指すKPMG。2023年11月、福岡の拠点にKPMGのソリューションがフルラインアップでそろい、専門的なサービスを組み合わせた最適なソリューションを提供することが可能になった。福岡のビジネスカルチャーに寄り添い、スタートアップ都市の直接的・間接的な成長支援に取り組んでいく。

KPMG Global Tech Innovator Competition

KPMGでは、スタートアップ支援の一環として、毎年「KPMG Global Tech Innovator Competition」と題したピッチイベントを開催しています。本年は、世界から23か国の優勝企業スタートアップCEOが登壇される予定です。日本予選も開催しており、最優秀賞を受賞した企業は、日本代表として世界大会に出場します。

2023年7月に開催した「KPMG Global Tech Innovator Competition in Japan 2023」の詳細については、こちらよりアクセスください。

Presented by KPMGジャパン text by Yoko Sueyoshi / photographs by Yasunori Hidaka / edit by Keita Okubo

#イノベーション#BRAND ISSUE

最新号

Ambitions Vol.5

発売

ニッポンの新規事業

ビジネスマガジンAmbitions vol.5は、一冊まるごと「新規事業」特集です。 イノベーターというと、起業家ばかり取り上げられてきました。 しかしこの10年ほどの間に、日本企業の中でもじわじわと、イノベーターが活躍する土壌ができてきていたのです。 巻頭では山口周氏をはじめ、ビジネスリーダー15組が登場。それぞれの経験や立場から、新規事業創出の要諦を語ります。 今回の主役は、企業内で新規事業を担う社内起業家(イントラプレナー)50人。企業内の知られざる新規事業や、その哲学を大特集します。 さらに「なぜ社内起業家は嫌われるのか?」など、新規事業をめぐる3つのトークを展開。 第二特集では、新規事業にまつわる5つの「問い」を紐解きます。 「企業内の新規事業からは、小粒なビジネスしか生まれないのか?」「日本企業からイノベーターが育たない。 人材・組織の課題は何か?」など、新規事業に関わる疑問を徹底解説します。 イノベーター必携の一冊。そろそろ新しいこと、してみませんか?