
現役時代は王貞治監督のもと常勝チームの中心選手として活躍。 2024年シーズンに福岡ソフトバンクホークスの監督に就任すると、1年目でパシフィック・リーグ優勝。2025年シーズンは、ライバルとのデッドヒートを制してリーグ制覇を果たした。 悲願の日本一を目指す小久保裕紀監督の「リーダー論」を紹介する。

小久保裕紀
福岡ソフトバンクホークス 監督
「監督に就任した際、孫(正義)オーナーからは次の3点を『仕事』として受け取りました。『強くあること』『王イズムの継承』『先端技術を取り入れた、経験や感覚に頼らない指導』。これを軸に取り組んでいます」
──中でも、現役時代に薫陶を受けた「王イズム」は、小久保監督の根幹を成している。
「おそらく、現役時代に王監督のもとでプレーした仲間たちは、それぞれ異なる言葉や形で、影響を受けていると思います。
僕が王監督から最も多く言われた言葉は『お前の背中を、若い選手が見ているよ』というものでした。
常に公平で、真摯に取り組む姿を示す。それは監督になった今も大切にしています。
ベテランだからいい、若手はダメなどの意識は不要。年齢や経験に関係なく、全員がチームの模範となる行動を示す。今、ホークスのメンバーは皆、その意識で練習や試合に臨んでいます」
──今シーズン、序盤は中心選手の離脱が続くなど、思うような采配が困難なスタートとなった。その一方、大胆な抜擢に若手選手が応えるなど、チームは大きく成長した。「まだまだ、本当にレギュラーを取るまでが世代交代」と語るが、同時に選手への信頼も見せる。
「一軍登録する31人は、ホークスの中で最も状態のいい選手。どの状況においても、今日のメンバーが『ホークスの最強メンバー』という気持ちで取り組んでいます」
──改めて、小久保監督自身にリーダーとしての「強さ」を聞いたところ「どっしり」という言葉が返ってきた。
「シーズンの中で好不調の波があっても、監督として選手に向き合う姿勢はブラさない。一方で、実際の行動や戦略などは、たとえ朝令暮改だとしても、変えるべきだと判断したら躊躇なく変えます。すべては、組織が強くなること、チームが勝つこと。1厘差でもいいんです。最後に優勝することだけを見据えています」
※2025年5月発売『Ambitions FUKUOKA Vol.3』より転載
photograph by Kensuke Takehara

Ambitions FUKUOKA Vol.3
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